提案
「それでマリモは、そのローズさんが
守り続けた館を、ずっと見守り続けて来て、
取り壊そうとする人が来ると妨害してたって訳か・・・」
シュウは、マリモのローズに対する思いを聞いて、
今まで、この館を取り壊そうとした人達を襲った
不幸な出来事の真相へと辿り着いた。
「そうなのです!
ローズが死を迎えるまで守って来ていたオウチを
取り壊すなんて以ての外なのです!」
「でも、この土地や館は既に、
ローズさんの手を離れてしまってるんだぞ?
その、マリモが嫌がらせをして追い出した人達だって、
正当に、自分のお金を支払って、
この土地や建物を手に入れようとして居たんだろうしな」
「ううっ、でも、でも・・・」
「それに、お前の社はそうでもないけど、
館の方は大分、傷みが進んで来てるから、
そう遠く無い未来に崩壊すると思うぞ?」
「ううっ、マリモの神力では、
自分のオウチを維持するのだけで
精一杯だったのです・・・」
「そこで、マリモに提案があるんだがな、
俺も、この土地や建物を買おうと思って下見に来たんだが、
俺とケンの本職の方は大工なんだよ、
どうだ?この館の形は、そのままにして、
俺とケンで、大規模な補修と補強の工事をするから、
俺が、この土地と建物を購入するのを認めてくれないか?」
「ローズのオウチは、このままなのです?」
「おう!俺達なら形を変えないで直せるぜ、
古い神社とか、お寺とかに手を入れる時には、
なるべく、現状と変わらない形にしたいって
お客さんが結構いるからな、
その手の仕事は、得意中の得意だぜ!」
「うん、そういう仕事は、
親方が好んで取ってたから、
随分と数をこなしてたよね」
シュウの言葉に、ケンも賛同の意を示した。
「お庭も壊さないのです?」
「ああ、このままで十分に綺麗な庭だからな、
裏手の空き地とかに、俺の作業場とか、
倉庫ぐらいは建てるかも知れないけど、
現状の物には殆ど手を入れない様にするよ」
「う~ん・・・それならば、マリモも良いのです。
シュウが言ってた様に、
壊れそうなローズのオウチを如何しようかと、
マリモも悩んでいたところだったのです。」
「おお、そうか!そりゃ良かったぜ!
マリモが許可しなかったら、
社をブッ潰してやろうかと思ってたしな!」
「怖い事を言ってはダメなのです!
このオウチは、マリモと一心同体みたいな
モノなのですから、
壊れちゃったら、マリモも只では済まないのです!」
シュウの冗談の言葉を聞いたマリモが、
震えあがりながら、そうシュウへと抗議する
「ハハハ、冗談だよ冗談、
どうだ?マリモ、その社に何か気になってる所とか、
直して欲しい所とかがあったら、
館を修繕する序に、俺達が直してやるけど、
何処か、そんな所が無いか?」
「それだったら!マリモのオウチの前に
カッコイイ赤い鳥居を立てて欲しいのです!
前に、女神フェルナ様の元へ、
土地神となった御挨拶で神界へと伺った際に、
オウチの前に鳥居を立てて貰うと、
神格が上がるのが早まったり、
神力が強まるとお聞きした事があるのです!」
「オッケーオッケー、社の前に赤い鳥居を
立てれば良いんだな?」
「そうなのです!
ちょ~カッコイイのですよ?」
「おう!俺もケンも、
ちゃんとした鳥居を造った事があるから、
その辺は安心してて良いぜ。」
「うん、木材の加工の仕方とかも、
ちゃんと全部、覚えてるから大丈夫だよ。」




