現地視察
「それでは皆さん、只今から御案内を致しますね」
シュウが購入を考えている物件の簡単な説明を終えた
商業ギルドの職員イイネは、
シュウの『実際の物件を見てみたい』とのリクエストに
答える形で、案内をする運びとなった。
「おう!宜しく頼むぜ」
「お手数をお掛けします。イイネさん」
「ご一緒させて頂きます。」
「よろしくな、イイネの姉ちゃん」
イイネの案内でピョロリの街中を進むシュウら一行は、
ミケルンが勤める『ニャンでも百貨店』がある
大きめの通りから少し外れた閑静な住宅街を進み
程無く長いレンガ積みの塀に囲まれた
住宅内でも一際広めの敷地を誇る邸宅へと辿り着いた。
「こちらが先程、お話をさせて頂いた御物件となります。」
長い塀の中央にある鉄格子で作られた門の前で立ち止まると、
イイネが、シュウらに向かって告げる
「へ~、暫く売りに出して無かった割には、
それ程、庭とかが荒れて無いんだな」
シュウが言う様に、鉄格子の向こうに覗いている庭は
それ程、荒れ果てている様には見受けられなかった。
「はい、然程高い頻度ではありませんが、
時々、庭師の方に入って頂いて、
手入れの方をして頂いておりますので・・・」
「庭師の人には、何か良くない事が起こったりなんかは
しないのか?」
「はい、当初はソレを気にしていたのですが、
おかしな事が起こるのは、
あの土地・建物を売買しようと考えている方のみに
限定されている様なのです。」
「へ~、そりゃ益々、
話が怪談染みて来た感じだな」
「うん、怪談なんかに、
良くあるパターンだよね、シュウ兄ィ」
「その様な建物のご購入を考えられるなんて
大丈夫なのですか?シュウ様」
「兄ちゃんたち、お化けがでたら
やっつけてくれよな」
「それでは、敷地の中へとご案内を致しますね」
イイネは、シュウらに、そう告げると
ポケットから取り出した大きな鍵を
門扉の鍵穴へと差し込みガチャンと回す
イイネが鍵をポケットへと戻し、鉄格子を手で掴んで押すと
ギ~ッという金切り音を発てて門が開いた。
「蝶番が油切れしてるみたいだな」
「それが、何度油を注しても、
建築業ギルドの方に調整をして頂いても、
直ぐに音鳴りする様になってしまうんですよ・・・」
「イイネさん、態と太陽を背にして
顔に影が落ちる様に雰囲気を作って話すのを
止めて貰っても良いか?」
「ハハハ、イイネさん役にハマってるって
感じですね」
「ええ、とても雰囲気がありました。」
「こえ~よ!イイネの姉ちゃん」
「オホホホ、シュウ様が全然怖がっていらっしゃる
御様子で在られませんでしたので、少し演出してみました。」
「まあ、俺は、どっちかって言うと、
死んだ者よりかは、生きてる者の方が恐ろしい派だからな」
「そう言えば、シュウ兄ィって
オカルト物とか全然怖がったりしないよね」
「私は、両方とも怖いと思います。」
「え~、オレはお化けの方がコワいと思うけどな~」




