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異世界ブラザーズ  作者: シュウさん
203/215

残る思い

「旦那様が行方不明となられてしまった船には、

商会の代表で在られた旦那様の他にも、

多くの商会員が乗船していたので、

商会を立て直すのも大変だったそうです。」

商業ギルドの職員であるイイネが、

当時の、残された商会長の妻の苦労をおもんばかる様に

同情心一杯の表情を浮かべながら、そう告げる


「まあ、商品の買い付けに行ってたんなら、

それなりの人数を一緒に連れて行ってたんだろうから、

商会としたら大打撃だったんだろうな・・・」

「うん、船に乗ってて亡くなられた人達も可哀そうだけど、

残された人達の苦労も並大抵な事じゃ無かったんだろうね」

「はい、その方々の御遺族は元より、

いっぺんに人員が減ってしまったお店の方も

大変だったと思います。」

「オレらも、かあちゃんが死んだとき、

たいへんだったもんな、ねえちゃん」


「はい、不幸中の幸いな事に、

商会の大番頭を勤められていらした方は、

他の大きな取引を担当されていらした関係で、

商会長様に御同行されていらっしゃらなかったので、

その方と、商会長を引き継がれた奥様とで、

商会を、なんとか立て直されたそうです。」


「へ~、そんな人が残っててくれたのは、

ホント、不幸中の幸いだったな」


「はい、商会の仕事には主に旦那様だけで、

奥様の方は全くと良い程、

たずさわれて居られなかったそうですから、

奥様のみだけだったら、とてもじゃ無いですけど、

お店の立て直しは叶わなかったと思いますね」


「へ~、そんじゃ、

その大番頭だった人の功績は、

並々ならないものだったって事だな」


「はい、実際に、

奥様がお年を召されて御商売から手を引かれる際には、

大番頭を勤められていた方の御子息に

商会長の座を譲られたそうですから、

奥様が感じられていらした感謝も

相当なものだったんだと思いますね」


「えっ?奥さんは、旦那さんから継いだ商会を、

自分の子供には継がせなかったのか?」


「はい、奥様は、

いつの日か、お帰りになられると信じていらした

ご主人様に操を立てられていらしたので、

生涯、再婚はなさらずに、

お子さんも儲けられなかったそうです。」


「そうだったのか・・・それも、悲しい話だよな、

でも、よく、それだけの苦労をして来たのに、

屋敷や土地を手放さないで済んだな」


「はい、実際に何度も、

商会が資金難に陥った際には、

あの屋敷や土地の、売却の話が持ち上がったそうなのですが、

その度に、奥様が『あの家が無くなると、

あの人の帰り場所が無くなってしまう。』とおっしゃって、

ご自身の生活などを切り詰めて、資金繰りをなさってたそうです。」


「なる程な、それだけの思い入りがあった場所ってんなら、

本人が亡くなった後にも、思いだけが残ってるってのも

ありそうな話だよな」

「でも、そこまで連れ合いを愛せる人の思いだったら、

そんなに悪いもんじゃ無いと思うよね」

「はい、最後まで旦那様が

戻られると信じていらしたんだと思います。」

「オレたちも、死んじゃった

とうちゃんや、かあちゃんのこと、

今でも大好きだもんな、ねえちゃん」

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