技術転化
「それで、この大型薄型魔導映写機に使われてる
マル秘扱いの素材なんだが、
俺やケンが生まれ育った国では『科学』って
技術を利用して実現化していたのに対して、
この国では、魔法技術を利用するのが主流だろ?
だから、魔法と相性が良い魔獣由来の素材で
自由に色が変えられる物が無いかを、
商業ギルドのイイネさんに頼んで探して貰ったんだよ、
そこで、ピョロ君は『カメレゴン・フライ』っていう魔獣を
知ってるか?」
「う~ん、僕は聞いた事が無いなぁ・・・
爺ィは、そんな名前の魔獣って聞いた事が有る?」
「はい、坊ちゃん
確か、マッスル王国の『魔の森』という所に生息する
大型のトンボに良く似た魔獣と聞いた覚えがありますな」
「おお~!流石はバトリャ~さん、
元大商会の会長さんだっただけの事はありますね、
バトリャ~さんが今言った様に、
カメレゴン・フライって魔獣は、
マッスル王国の、魔の森ってとこで生息している
全長5メートルもある、
見た目トンボに似ている魔獣なんだが、
その特徴が面白くて、
獲物を狩る際に、直径1メートルもある大きな目玉を
周囲の風景に合わせて色を変え擬態して、
油断して近付いた獲物を仕留めるっていうんだよ」
「へ~、そんな魔獣が居るんだね、
一度、現物を見てみたいものだけれども、
全長5メートルもあるトンボじゃ、
僕なんか危なくて近寄れそうに無いよね」
「はい、坊ちゃん
トンボ型の魔獣は、得てして肉食が主ですから
近寄るのは非常に危険が伴う行為だと思われますな」
「ああ、それこそ、ピョロ君が近くに行ったら
『オレ、オマエ、マルカジリ』だろうな、
そんで、今まで、そのカメレゴン・フライの目玉部分の
素材ってのは、
死んだ時の色で固定されてるもんだから、
バラバラにして、色んな色を組み合わせた
モザイクタイルみたいな使われ方をしてたんだけど、
俺が考えたのは、電気信号を利用すれば、
その目玉素材の色を、
自由に変えられるんじゃ無いかって事なんだよ」
「デンキシンゴウ?」
「ほぉ、シュウ殿
それは、一体全体どういった仕組みなのですかな?」
「俺も専門家じゃ無いんで、
詳しい事なんかは分からないんだが、
俺達、人や動物なんかが体を動かしたりする時ってのは
頭の脳ミソから、微弱な電気の信号が送られて、
どんな風に体を動かせっていう
命令が下されてるそうなんだよ」
「へ~、僕達の体の中には電気が流れてるんだね~」
「はい、坊ちゃん
私も初めて耳にしました。」
「まあ、そんな訳で、
イイネさんに頼んでカメレゴン・フライの目玉の
素材を入手して貰ってから、
商業ギルドの開発部の人達に頼んで、
色んな強さとか種類の電気を素材に流して
実験して貰った結果、
自由に色が変えられる事が発見出来たって訳だな」
「今回の、避難用シェルターに使う為の魔導具関連で
沢山の新しい技術が開発されたんだね」
「まさに、シュウ殿の優れた知識は、
この世に新技術を生み出す宝庫ですな・・・」
「イヤイヤイヤ、俺が持ってる知識なんて
みんな付焼刃的なもんなんだから、
根本には、ちゃんとしたホンモノが有って、
ただソレを焼き直してるだけにしか過ぎないんだよ」




