作業動線
「そんで、ここがピョロ君用の寝室だな」
シュウが、ピョロピョ~ロが避難時に使用する
執務室内にあるドアを開きながら告げる
「へ~、執務室から直に入れるんだね」
「そうですな」
「ああ、バトリャ~さんや、メイドの人達なんかが、
朝とか、緊急の時とかにピョロ君に声を掛ける時用に、
ちゃんと廊下にも扉が設けてあるんだけど、
ピョロ君が、ここで仕事をしてて、
寝る時になったら、一々廊下に出てから
隣りの部屋に移動するのも面倒だろ?
だから、直接寝室に入れるドアも設けたんだよ、
執務室の入り口ドアには、
屈強な門番が常任してるから安心だしな・・・」
「ハハハ、ホントに至れり尽くせりだね、
ありがとうね!シュウ」
「うむ、坊ちゃんの安全と利便性を考慮した
良い造りですな、
私からも、感謝を申し上げますぞ、シュウ殿」
「いやいや、俺が根っからの楽したがりだから、
自分が使うなら、こんな造りが楽かな~?とかを
考えて造ってるだけなんだから、
2人とも、そんなに感謝しなくても良いんだぜ?」
「でも、それが結果的に
ちゃんと僕の為になってるんだから、
シュウに感謝をするのは正しいと思うよ」
「自らが造った品物を、実際に使用する人の事を
考えて造るというのは、
全ての職人に取っての、基本的な理念ですからな、
それを実行したシュウ殿に感謝を送るというのは、
正当な評価だと思いますぞ」
「ああ、それもそうだな、サンキュな2人とも、
そんじゃ、そろそろ、
次に移動しようと思うんだが、
ケン達の方が先に回って、もう終わってると思う
従業員の人達用のスペースを先に回るか、
それとも、ここに隣接している、
バトリャ~さん用の執務室と寝室を、
先に見るか如何する?」
「う~ん、如何しようか?爺ィ」
「私の事は後廻して宜しいので、
先に、館の皆が利用するスペースを見て周るのが
宜しいのでは無いのでしょうか?」
「それじゃ、そうしようか・・・
シュウ、先に館の皆が使う方から見せて貰えるかな?」
「オッケー!そんじゃ、案内するから、
皆、俺に付いて歩いて来てくれよな」
シュウは、ピョロピョ~ロの寝室にある
廊下側に面したドアを開くと、
皆を先導しながら歩き始めた。
「まずは、ココからだな!
長テーブルとイスが並んでる所が食堂で、
その奥の、ナンチャッテ暖炉が置いてある所が
歓談なんかをするリビング的なスペースだぜ!」
シュウが、廊下にある両開きの大き目な扉を開くと、
入って直ぐのスペースには、
一度に30人程が飲食を出来る長テーブルとイスが、
そして、その奥には薄手の絨毯の上に、
シンプルなデザインのソファや、
そのソファに合わせて、低めのテーブルが配置されていた。
「あの、壁に開いている穴から見えるのは、
さっき、シュウが案内をしてくれた厨房だよね?」
ピョロピョ~ロが、食堂横の壁に設けられた
開口部の向こうに見える部屋を見て尋ねる
「おう!さっき見て周った厨房で合ってるぜ!
あそこの厨房で調理した料理を、
そのまま、あの壁の開口部カウンターを使って
食堂に運び込むって寸法さ」
貴族の屋敷では、通常、厨房と食堂が独立して居り
料理などはトレイなどに乗せて運ぶのだが、
作業の利便性を考えたシュウとケンは、
日本の寮などにある食堂の様に、
厨房と食堂との間の壁に、
開口部とカウンターを設ける形式にしたのであった。




