こ、この素材は!?
「へ~、この黒っぽい金属の板って
黒魔鋼っていうのか~
爺ィは、黒魔鋼って金属の事、知ってる?」
「はい、坊ちゃん
黒魔鋼は、魔力の伝導率が良い事から、
魔導具に使われたり、
冒険者の方々が使われる武器などに
使われて居りますな」
「流石、バトリャ~さんは元、
商会の会長さんだけあって、
素材なんかに関しても詳しいな、
この板、コンロの上に付いてる板なんで
『天板』って言うんだけど、
この天板の他にも、
内部の熱源として黒魔鋼のコイルが
使われているんだぜ」
「コイル?」
「ああ、ピョロ君
コイルってのは、凄く細長い棒状にした金属を
こんな風に渦巻き状にした物を言うんだよ」
シュウは、仕事着のカーペンターパンツの
ポケットに入っていた
建物などに寸法を出す時に使う水糸を取り出すと
自らの指へとグルグルと巻きつけて、説明をした。」
「その、コイルっていうのを如何使うの?」
「坊っちゃん、職人の方々の技術を、
そう細かく尋ねるのは・・・」
「ああ、別に構わないよ、バトリャ~さん
ただ単に、黒魔鋼製のコイルを使ったからって、
これと同じ性能のコンロが造れる訳じゃ無いからな、
コイツを造るのには、
商業ギルドにも協力をして貰って、
色々と試行錯誤を繰り返しながら開発をしたって
経緯があるから、
そう簡単には真似が出来ない仕上がりになってるんだよ」
「ほう・・・では、商業ギルドには、
このコンロのシステムを知る者が居るという訳ですな」
「はい、バトリャ~様
当ギルドの開発部の者達が、
シュウ様やケン様と共に開発に当たらせて頂きましたので、
システム構造などの技術を把握させて頂いて居ります。
今までには無かった発想の技術でしたので、
当ギルドでも、特Aクラスの守秘技術として登録をされる
運びとなりました。」
それまで、黙ってシュウらの会話を聞いていた
商業ギルドのイイネが、そう発言をする
「まあ、コッチでは今まで無かったって言っても、
俺やケンの暮らしてた国では、
今一つ流行らなかったシステムの、焼き直しなんだけどな・・・」
「何で、シュウ達の国では流行らなかったの?」
「俺らの国には、黒魔鋼が無かったからな、
鉄なんかの金属で、
同じ様な構造のコンロを造ってたんだけど、
それだと、熱効率が今一つなんで、
高温を継続的に維持するっていう事が出来なかったんだよ、
それで、このシステムに関しては当初、
今回の開発をする際には除外して考えてたんだけど、
前に、ラビ子から黒魔鋼について聞いた話を思い出してな、
試しにソレを試してみたら大成功だったって話さ・・・」
「へ~、じゃあ、ラビ子ちゃんには感謝しなきゃだね」
「得てして、過去の記憶から、
新しいアイデアが生み出されるという事は、
ままにして有りますな」
「ああ、今回の技術を商業ギルドに登録した事で、
今後、この技術を利用して生み出され
販売された商品に対して、
何パーセントかの技術提供費が入って来るんだけど、
新しく商業ギルドに開設したラビ子とウサ太の口座にも
4分の1づつ振り込まれる様にしたんだよ」
シュウらの普段の生活費としては、
途中の街や村などに立ち寄った際の修繕費や、
手が空いた際に作成する家具類などの販売費で、
十分に送って行けるので、
アナポーの街にあるコウヤサン教会からの
コウヤサン・ウォーターの売り上げの一部や、
今回の技術提供費の分は全額、
将来に備えて4人の口座に、
4分割されて振り込まれる手筈となっていた。
当初、ケンは、
将来、日本に帰る自分の分は必要ないと言っていたが、
日本に帰る際の、嫁や子供へのお土産の資金として
貯金をして置けば良いと、
シュウが説得をしたのであった。




