同量の金と等価
ジュワ~!!
鉄板の上に乗せられた細打ち縮れ麺が、
食欲を催させる良い音を奏でだす。
シュウの指示通りに、
もう一通りの肉と野菜を焼きあげ大皿にて提供したラビ子が、
先程までより、やや小ぶりに切った肉や野菜を軽く炒めた後に、
シュウより渡されたヤキソバ用の麺を投入したのだ。
「へ~、麺を鉄板で炒めるのか、
この前、街のレストランで食べたパスタとかいう
麺料理とは、また少し違うみたいだね、爺ィ」
「そうですな、坊ちゃん
パスタの麺は、もう少し太かったし、
麺を茹でてからフライパンで炒めてましたからな」
「ピョロ君達は、パスタを食べた事があるのか、
油を使って麺を炒めるってとこは似てるけど、
このヤキソバって麺料理は、
まったくの別もんって思った方が良いぜ、
そうだな・・・パスタが上流階級も視野に入れた料理と考えると、
このヤキソバは、庶民の胃袋を満たす事にのみ、
焦点を絞った料理ってとこかな・・・」
「ハハハ、言い得て妙だね、シュウ兄ィ」
「はい、ヤキソバの『あり方』を良く表した言葉だと思います。」
「オレは、ウマけりゃナンでもいいとオモうけどな」
「ラビ子、麺に良い感じの焦げ目が付いてきたから、
そろそろ、粉ソースを投入していいぞ」
「はい、シュウ様、
この粉ソースは、お湯に溶いたりしなくても宜しいのですか?」
「ああ、そのままで上に振り掛ければいいぞ、
お湯で溶いた方が均等に味付け出来るのかも知れないが、
所々、味の濃い所とか、薄い所があったりするのも、
バーベキューでのヤキソバの醍醐味だからな」
「はい、畏まりました。
では、このまま振り掛けるとしますね」
ラビ子が、いくつかの銀色の小袋の封を切り
麺の上に振り掛けた後、フライ返しにて掻き雑ぜると、
ジュワ~!という小気味の良い音と共に、
食欲を掻きたてるソースの焼ける匂いが周囲に立ち込めた。
「うわ~!初めて嗅ぐ香りだけど、
何か、お腹が膨れて来てても、
また食べたくなる様な良い香りだね」
「そうですな、坊ちゃん
私も初めての香りですが、
多くの香辛料や果実類などのブレンドを感じさせる、
芳醇で濃厚な香りですな」
「お~!凄ぇな、バトリャ~さん
この香りを嗅いだだけで、
ソースに、沢山の香辛料と果実類が使われているのを見抜くなんて、
流石は、大きな商会の元会長を務めていただけはあるな」
「いえいえ、私などはマダマダですな、
食料を専門に扱う商会の重役などは、
この香りを嗅いだだけで、
どんな香辛料や果実類が使われているのかまで
ある程度の当りを付けられると思いますからな、
私の知ってる大きな商会の商会長殿の奥方に、
オオカミ獣人の御方がいらっしゃるのですが、
その御方は、夫である商会長殿が帰宅した際に、
昼間、どんな香辛料を使った料理を食されたかまで
ズバリ見抜かれたそうですからな、
よく、それでは絶対に浮気などは出来ませんなと、
2人で笑い合ったものですよ、ハハハッ」
「ハハハ、そりゃ確かに凄いですね、
ちなみに、その奥方って大きな狼に変身出来たりはしませんよね?」
「ハハハ、商人と、オオカミ獣人の女性の組み合わせと来ると、
確かに、その名作が思い浮かぶよね、シュウ兄ィ」




