定番商品
「よ~し!お代わりを持って来たから、
ジャンジャン食べてくれよな!」
大皿に、焼いた肉や野菜を山盛りにして持って来たシュウが、
テーブルの中央に、その大皿をドン!と置いてから告げる
「シュウ様、もう私は十分に頂きましたので、
そろそろ、焼き係を交代致しませんか?」
「おう!そんじゃ、そうするか、
ラビ子、もう一回ぐらい、
この大皿に乗ってるぐらいの量を焼いたら、
次は、残りの肉や野菜を全部ブチ込んじまって、
焼きソバを焼いてくれるか」
「はい、畏まりました。
焼きソバは、いつもの様にウスターソースで、
味付けをすれば宜しいでしょうか?」
「あっ!そうだった、そうだった
肝心な事を教えとかなきゃな!
バーベキューん時の焼きソバに限っては、
こっちの麺とソースを使わなきゃならねぇんだったよ」
シュウは、傍らに置かれた魔導リュックの中から、
小分けされ袋詰めされた麺が幾つか、
大き目の袋に詰められている物を取り出すと、
ラビ子へと手渡した。
「こちらの麺を使うのですか?
何か、いつもの焼きソバに使っている麺より、
細くて縮れが細かい麺ですね、
では、この麺を使用してウスターソースで味を付ければ、
宜しいでしょうか?」
「いや、味付けは、
この麺と一緒に入っている、
銀色の小さい袋に入った粉ソースで付けてくれ」
「えっ?この小さな袋に、
味付け用の粉ソースが入っているんですか?」
「おう!焼きソバの時は、
この麺とソースじゃなきゃならんと、
俺達の出身地の国では、法律で定められてるんだよ」
「ええっ!?国の法律で決まってるんですか!?」
「シュウ兄ィ、嘘はダメだよ嘘は、
ラビ子ちゃん、確かに僕らの出身国で、
バーベキューの時に、その焼きソバを使う人は多く居るけど、
別に、法律で定められて居るって訳じゃ無いからね、
良く言う所の、定番商品ってヤツだね」
「ああ、なる程、そう言う訳なんですね、
ウフフッ、ビックリしました。」
「それにしても、シュウ兄ィ
この焼きソバって何処で見つけて来たの?
トレウスの冷蔵庫の中には、
確か、入って居なかったよね?」
「おう、ソレだったら、
台所の床下収納庫の中から見つけたんだよ、
ソイツを見つけ出した時には、心が震えたね、
向こうに帰らなきゃ、
もう2度と食べられないと思ってたモンだからな」
「へ~、そんな所に入ってたのか、
全然、気が付かなかったよ、
ところで、肝心な事を聞くけど、
その、床下収納っていうのも、
条件の方は、冷蔵庫と一緒だったの?」
最後の方は、近くに居るピョロピョ~ロやバトリャ~を考慮して
声のトーンを落として尋ねる
「おう、その辺は大丈夫だったぜ、
翌朝、確認したら、ちゃんとリセットされてたわ」
同じく、シュウもトーンを落として答えた。
「ふ~、良かった。
コレっ切りとか言われたら、
全神経を集中して、味あわなきゃならなくなる所だったよ」
「ハハハ、まあ、そうだよな、
バーベキューのシメの焼きソバは、
じっくり味わうってよりかは、無心になってガッツリかっこまなきゃ、
食べた~!って気にならねぇもんな!」




