ブランド牛とブランド豚
「いっちょあがり~!
皆、あったかい内に食べた方が美味いから、
俺の事は気にしないで、先に始めててくれよ」
「シュウ兄ィも、こう言ってるんで、
先に食べ始めましょう。
お肉には下味が付けてありますので、
野菜の方に、この壺に入っているタレを掛けて食べて下さいね、
黒っぽい壺の方が辛口のタレで、
茶色っぽい壺の方が甘口になっています。」
ラビ子より、トレウス荷台の謎空間内の台所にあった
焼肉のタレが入っている透明なガラス容器などは、
一般的に流通をしていないと聞いたので、
街で購入した素焼きの壺へとタレを移し替えて、
ピョロピョ~ロらに提供する事としたのであった。
「はい、畏まりました。
シュウ様、少し頂きましたら焼き係を代わりますね」
「シュウ兄ちゃん、おっさき~!」
「うん、それじゃ悪いけど、
先に頂かせてもらうよ、シュウ」
「御馳走になります。シュウ殿」
「おう!バンバン焼くから、ドンドン食ってくれよな!」
皆の分の、焼き上げた肉や野菜を皿に乗せて提供したシュウは、
新たな肉や野菜を、大きな焼き網の上にトングで乗せながら言った。
「うわ~!このお肉、軟らかくて凄く美味しいね!爺ィ
これって何のお肉なのかな?」
「確かに、驚きの美味しさですな、坊ちゃん
う~む、マッド・パイソンやシモフ~リ・ボアに似た
味や香りですが、
こちらのお肉の方が遥かに軟らかく美味しいですな、
さて?ケン殿、これは何のお肉なのですかな?」
「えっ!?こ、この肉ですか!?
こ、これはですね、え~と、た、確か・・・そ、そうだ!
ラビ子ちゃん、これって何の肉だったっけ?」
トレウス内の台所にある冷蔵庫に、
使った分だけ、自動的に供給される肉なので、
何の肉かを答えかねたケンは、
こちらの食材事情に詳しいラビ子へと答えを託した。
「えっ!?わ、私ですか!?
え、え~とですね、このお肉は・・・そ、そう!
このお肉は、シュウ様やケン様方の故郷で養殖された
マッド・パイソンやシモフ~リ・ボアの亜種のお肉ですね」
「へ~、シュウ達の故郷のお肉なのか~」
「ほぉ、養殖された亜種のお肉でしたか、
道理で、味や香りが似ていると思いました
しかし、この肉質の柔らかさは本当に驚きですな、
どの様な育て方をすれば、
この様な美味しい肉質を持たせられるかを、
ケン殿は御存じで、いらっしゃいますか?」
ピョロピョ~ロが単純に納得したのに対して、
元、商会の会長であった執事のバトリャ~は、
その飼育方法の方が気になった様だ。
「育て方ですか?
僕も街で、マッド・パイソンやシモフ~リ・ボアの、
お肉を使った料理を食べた事があるんですが、
このお肉にくらべると、やや大味な感じがするんですよね、
多分ですけど、成長しすぎた個体を捌いてるからだと思うんで、
もう少し、若い内に捌く様にして、
与えるエサなんかも、栄養のバランスとかを調整して、
赤身に脂分が入る様に研究すれば、
軟らかい肉質になるんじゃないんですかね?」
「なる程、冒険者の人達が狩って来る魔獣じゃ
成長具合なんか考えられないもんね、
ちょうど良い成長具合で捌くには、
養殖するしか方法が無さそうだよね」
「そうですな、与えるエサにまで気を配るとは、
徹底した管理が為されて居りますな、
しかし、多少の研究時間を計算しねばなりませんが、
その、手順さえ確立してしまえば、
恒久的に安定した収入が望めますな・・・」
「ええ、僕達の故郷では、
他の国に輸出出来る程の規模を持ってはいませんので、
こちらの街で、食肉用の養殖が出来る様になれば、
かなりの市場を独占出来ると思いますよ」




