調和
バス!バス!バス!バス!地下シェルターの建築現場に
シュウが放つ魔導釘打ち機の打撃音が警戒に響く、
間仕切壁の下地が取り付いたので、
そこに壁板を打ち付けているのだ。
トントン・・・「ん?」
調子よく作業を行っていたシュウは、
何者かに肩を軽く叩かれたので、
後ろを振り返って確認をする
「おう、ケンか、
如何かしたのか?」
後ろを振り返って確認すると、
弟のケンが立っていたので、
作業の手を止めて聞いてみる
「うん、シュウ兄ィ
メイドさんが来て『そろそろ休憩しないか?』ってさ」
ケンは、そう告げながら、
入り口のスロープの方を指差した。
シュウが、ケンの指を差す方向へと目を見やると
確かに、先日、この館を訪れた際に、
案内で出迎えてくれたネコ耳メイドが佇んで居る
「おう、そんじゃ一服するとするか」
シュウは、その場で身に付けて居た道具類を下ろすと
ケンや、ラビ子らと一緒に、
メイドが待つスロープの方へと向かった。
「お疲れ様です皆様、
作業のお邪魔をして、申し訳御座いません。」
シュウらが近くまで来ると、
ネコ耳メイドは、深々と頭を下ろしながら、そう告げた。
「いや、適度な休憩を取った方が、
作業の効率は上がるからな、こっちこそ助かるぜ」
「そうだよね、シュウ兄ィ
僕達も普段から作業中の休憩には気を付けて居るもんね」
「左様で御座いますか、
そう言って頂ければ幸いで御座います。
御休憩は、どちらに御用意すれば宜しいでしょうか?
主からは、館内なら応接間にて、
屋外ならば、庭園の東屋では如何かと伺って居るのですが・・・」
「そうだな・・・今日は天気も良いし、
陽気も暖かいから、外の方が気持ちよさそうだな」
「うん、僕も外の方が良いと思うよ」
「畏まりました。
では、庭園へとご案内致しますので、
どうぞご足労をお願い申し上げます。」
シュウらは、ネコ耳メイドの案内で、
館の庭園にあるという東屋へと向かった。
「ただ今、御用意の方を致しますので、
こちらで、お寛ぎになってお待ち下さいませ。」
「おう、分かった。」
「ありがとう御座います。」
「お手数をお掛け致します。」
「ネコの姉ちゃん、
おいしいオカシも、もって来てね」
途中、館の外部にもある手洗い場で、
顔や手を洗ってサッパリとした一行は、
東屋に置かれた大理石製のベンチへと腰を下ろしながら、そう告げた。
「しっかし、流石は、この街の長の館だけあって、
庭もデカいし、庭木や花の手入れなんかも細かく気を使ってあるな」
メイドが、お茶などの準備へと戻ったのを見計らい、
シュウが、皆へと声を掛ける
「うん、一流の職人の仕事というのが、
良く分かる出来栄えだよね」
仕事柄、大きな屋敷に付き物の、
手入れが行き届いた庭を見慣れているシュウ達は、
ある程度、庭の良し悪しを判別できる目が備わっていた。
「そうなのですか?
素人の私には、ただ単に、
美しく整った庭という風にしか見えませんが・・・」
「うん、オレにも、デカいニワってことしか、
わからねぇな」
「ああ、木や花の手入れを綺麗にするのは勿論なんだけど、
この規模の大きさの庭になると、この東屋の位置取りとか、
池や小道や石なんかの配置も、計算尽くされてるんだよ」
「館の窓から見た見栄えとか、
この東屋から見渡す風景の事とかね・・・」
「なる程、ただ単に綺麗な花などが、
沢山植えてあれば良いという物でも無いのですね」
「へ~、そんなコトまで、きをつけてるのか~」
「まあ、中には高級な植木や花を沢山植えてあれば良いって、
勘違いをしている職人が居るのも確かなんだがな・・・」
「そういう人は大概、一回限りで見なくなるよね」




