一人前の証
「そんなに高価な釘では、
盗もうとする輩が出るんじゃ無いのですか?」
「1ぽん1万ギルのクギじゃな~」
シュウらが魔力にて造り出していると思われる、
魔導釘打ち機から打ち出されるミスリル合金製の釘の
1本当たりの予想金額を聞いたラビ子が心配そうに尋ねる
「ああ、実際に目敏く気付いたヤツが居たみたいで、
盗もうとしている所を、警備の兵士に捕まったって聞いたな」
「やはり、御座いましたか、
その盗人が捕まったという時には、
シュウ様方が造られた物は壊されずに済んだのでしょうか?」
「クギぬきとか、バールをつかわれたら、
兄ちゃんたちが、せっかくツクったのがコワれちゃうもんな」
「ああ、それに関しては大丈夫だったみたいだぞ、
基本的に外部に面した部分には、
壊れにくい様に魔法で付与を施してあるし、
俺達が打ちつけた釘は、俺達にしか抜けないらしいからな」
「えっ?シュウ様方にしか抜けないのですか?」
「それなら、あんしんだな」
「ああ、その捕まった釘泥棒ってのも、
バールで釘を抜いて盗もうとしていたらしいんだけども、
幾ら力いっぱい抉ってもビクともしないんで、
色んな方法で釘を抜こうとしている内に、
周りの警戒の方が疎かになって捕まったそうだぜ」
「その釘が、シュウ様方には抜けるのですか?」
「ああ、俺達も、その話を聞いた時によ、
後から釘が抜けないんじゃ、
お客さんが、リフォームとかしたい時に不便だなって思ってな、
試しに抜いてみたら、俺とケンには普通に抜けたんだよ、
ちなみに、その時一緒だった知り合いが抜こうとしても、
確かにビクともしてなかったな」
「シュウ様方にしか抜けないんじゃ、大丈夫そうですね」
「タテモノをイジるときには、
プロにマカせるのがイチバンっていうもんな」
「ああ、この釘だったら錆びないし、
何らかの効果を魔法で付与する時にも、
他の金属と比べると、親和性が高いみたいだから便利なんだよ」
「なる程、ミスリルは、とても高価で貴重な金属ですけれども、
その、魔力の通りの良さから、
良く高級な魔導具の製作へと使われて居りますものね」
「やすいマドウグは、コクマコウがつかわれるんだよな」
「コクマコウ?」
「はい、黒い魔の鋼と書きまして、
『黒魔鋼』とお読みするのですが、
ミスリル程では無いにしても、
良く魔力を通す性質をして居りますので、
安価な魔道具や、武器の製作などに使われて居りますね」
「ボウケンシャの人たちが、
ルーキーをソツギョウしてから、
サイショにめざすのがコクマコウせいのブキなんだってさ」
「なる程、そこそこには高価だけれど、
手に入らない価格では無いって訳か・・・」
「はい、黒魔鋼製の武器を入手出来れば、
冒険者として一人前として見られる様になると、
父から聞いた事が御座います。」
「母ちゃんのショクドウのショクザイをカイつけるために
うっちゃったけど、
オレたちの父ちゃんもコクマコウのケンをもってたんだぜ!」
「へ~、ウサ太達の親父さんは、
冒険者としてナカナカの腕前だったんだな」




