魔法金属
「そんじゃ、間仕切壁の下地から始めるから、
ラビ子とウサ太は、この材料を図面で壁になっている場所に、
3本づつ置いてってくれるか?」
「はい、畏まりましたシュウ様」
「シュウ兄ちゃん、なんで3本づつなんだ?
ユカとテンジョウにやってくなら、2本でいいんじゃないの?」
「ああ、それか、良く気付いたなウサ太、
それはな、一応は魔法で固めてあるとはいえ下は土だろ?
足元から冷えて来ない様に、床を少し嵩上げする様にして、
断熱材的な役割をする、乾燥させた草を入れてくから、
その高さに壁も合わせてあるんだよ」
「へ~、そのタメなのか~」
「よし、ケン、
俺達は、ラビ子達が材料を配って歩いてくれてる間に、
壁下地の墨を打ってっちまおうぜ」
「オッケー、シュウ兄ィ」
ラビ子とウサ太が、細長い壁下地用の材料を配っている間に、
シュウとケンは、トレウスの荷台にある謎空間内の倉庫に置かれていた
墨壺を使って下地の墨を出し始める
墨壺とは、日本でも良く使われている、
墨を含んだ綿やスポンジの間を通した糸をピンと張り、
真っ直ぐな線を床や壁、天井などに出す道具なのであるが、
当初、シュウ達は『異世界に来ても、魔法を使うんじゃ無くて、
普通に墨壺で墨出しするんだな~』ぐらいに考えて使用していたが、
使用している内に、どれだけ糸を伸ばしても線がぶれないし、
墨の濃さもかすれて来ないのに気付き、
見た目は変わらなくても、一応は魔導具なんだなと感心をした。
一通りの墨を出し終わり、
ラビ子らの材料配りも終わったので、
シュウ達は早速、床の下地から造り始める事とする
ラビ子とウサ太に、床に打たれた墨に合わせて材料を置いて貰い
シュウとケンが、魔導釘打ち機でバス!バス!バス!と、
それを留めて行く作業が続く、
すると、ふと気付いた様子でウサ太がシュウに尋ねる
「シュウ兄ちゃん、兄ちゃんたちがツカってるドウグって、
クギがなくなんないのか?」
ウサ太は、作業を始めてから一度もシュウらが、
釘を補充していない事に気付いたのである
「ああ、良く気が付いたなウサ太
本来の釘打ち機なら、この本体の下の方にある丸い部分が、
カートリッジになってて、無くなったら釘の補充をするんだが、
コイツの場合は、タダの飾り的なもんみたいで、
実際には、俺やケンの魔力を消費して釘を造り出してるみたいだぞ、
まあ、電機やエアなんかの動力源を使用していないコードレスな段階で、
コイツが魔導具だってのは分かるがな・・・」
「そう言えば、シュウ様、
シュウ様方が打たれている釘って、
何となく青みがかって見えますよね、
この見た感じからして、普通の鉄製では無いのですか?」
ウサ太の質問に答える為に、シュウが一時、
作業の手を弛めるのを見たラビ子が、
そう質問をする
「ああ、やっぱ気付いたか、
この釘は、鉄じゃ無くて、
なんか、ミスリルとかいう金属の合金らしいぞ?」
「ミスリル!?」
「知っているのか!?ルワィデェ~ン!」
「その『るわいでん』って言うのは何ですか?シュウ様」
「ああ、所謂『様式美』的なもんだから気にするな」
「はぁ・・・?」
「そんで、ラビ子はミスリルという金属の事を知ってるのか?」
「はい、とても高価な魔力を通し易い魔法金属で、
ミスリル単体だと柔らかいので、他の金属と混ぜて合金に加工して、
魔道具や武器などに使用すると聞き及んだ事が御座います。
昔、母の食堂へと食事に来られた凄腕と仰る冒険者の方が、
ミスリル製の片手剣を入手したと自慢なさって居られましたが、
片手剣一本のお値段で、大きな家が一軒建つと仰られて居りました。」
「へ~、片手剣一本で豪邸が立つ値段なら、
この釘一本でも、一万ギルぐらいはするかもな」




