酸欠予防
「そう言えばシュウ様、このスロープの照明も、
シュウ様が建築魔法で付与されたものならば、
蓄えられた魔力が無くなる毎に、
シュウ様がまた、この街を訪れられて魔力の補充をなされるのですか?」
「それもまた、メンドウそうだよね」
少し心配そうな表情を浮かべながら、
ラビ子とウサ太が、シュウに話し掛ける
「いいや、物を発光させる程度の付与だったら、
身体能力を上げたりするのと違って、
幾らも魔力を消費しないからな、
空気中に含まれる魔素を吸収出来る様に造って置けば、
後から魔力を補充する必要が無いんだよ、
第一、緊急時に避難する為のシェルターなんだから、
何時使うかなんて分からないだろ?
いざって言う時に、魔力が切れていて、
足元マックラなんてホント頂けないからな・・・」
「それも、そうですね、
魔力を補充する方式にしても、
お掃除に入った時や、定期点検などの時に、
誰でも補充出来る様に造って置かないと、
肝心な時に機能をしなかったなんて事にでもなったら、
シュウ様方の信用を落としかねませんものね」
「へ~、マリョクをホジュウしなくてイイなんて、
ホントすげぇな!兄ちゃんたちは!」
「ああ、そうだぞ、
後々の、アフターメンテナンスなんかでの、
稼ぎを得るのも大事っちゃ~大事だが、
信用を無くしたり、悪評が広がって、
その後の、仕事が来なくなるなんて事になりゃ、
アフターメンテの稼ぎどころの話しじゃ無い程の大打撃になるからな、
建物の仕上がりは後々の事も良く考えて、
造り上げなきゃならないって事だな」
「シュウ兄ィ、地下部分も掘れたんで見てくれるかな」
その時、建築魔法の『掘削』を使い、
地下のシェルターとなるスペース部分を掘っていたケンが、
そう声を掛けて来た。
「おう!ご苦労だな、ケン
いま丁度、スロープ部分のカッコが付いたとこだったから、
ナイスなタイミングだったぜ、
まだ、入り口ん所にハッチを造らなきゃなんね~んだけど、
先に地下部分を造って、空気を清浄化出来る様にしてからの方が、
一応は安心だからな、
この陽気じゃ暫くは雨の心配も無いだろうし、
ハッチは後回しにして、先に肝心の地下部分を造っちまおうぜ」
「お疲れ様でした、ケン様」
「ケン兄ちゃん、おつかれ~」
「うん、そうだね、
一応、僕が掘った部分に関しては、
掘った先から固めて行ってるんで、
周りからガスが湧いて来るなんて心配とかは無いと思うんだけど、
地下に籠る人数が増えると酸欠とかの危険も考えられるからね、
入り口の所に、送風機でも置いておいたほうが安心かもね」
「それもそうだな・・・よし!
そんじゃ、俺がトレウスに行って、
加工場に置いてある大型の業務用扇風機を取って来るから、
ケンは、ラビ子達と一緒に、
地下に使う材料なんかを運び込んどいてくれるか?」
シュウが、トレウス(魔導トレーラーハウス)の荷台にある、
謎空間内の木材加工場から持って来ようとしている扇風機は、
一般的な家庭用の扇風機とは違い、大型でボディも金属で出来ており、
魔力を補充すれば稼働するコードレスタイプの優れものであった。
「うん、分かったよ、シュウ兄ィ」
「畏まりました。シュウ様」
「オレにマカせときなよな、シュウ兄ちゃん
兄ちゃんにツクってもらったウデワのパワーで、
バンバンとハコんどくからさ!」




