寄木細工
「よっしゃ!仕上がったぜ!」
シュウが、頭の刃の部分が小さいノミや、
彫刻刀の様な道具を使って小1時間程の作業をした後、
ウン!と大きく頷いてから、そう告げる
「お疲れ様です。シュウ様
今、ケン様にも御声掛けをして、
お茶でも御淹れ致しますね。」
「すっげぇな!シュウ兄ちゃん
こんな小さいウデワに、
よく、そんなコマかいモヨウがホレるな!」
「まあな!本職は大工だが、
細かい細工物や、家具造りなんかは、
俺もケンも、ガキの頃から親父に仕込まれたからな、
そんじょそこらの職人には負けない腕前って自信があるぜ!
それと、ラビ子、折角ブレスレットが完成したんだから、
お茶を淹れる前に、ウサ太と一緒に着けてみろよ」
「はい、分かりました。シュウ様」
「もう、つけてイイのか?兄ちゃん」
「ああ、お前達に普段から使って貰う為に造ったんだからな、
今、『身体強化』と『重心調整』の能力を、
右手首用と左手首様に、其々『付与』するから、
ちょっと待ってろよ、『能力付与!』×4・・・良し!
これで、上手い事行ってる筈だから、2人とも着けて見てくれよ」
シュウは、完成したブレスレットの一つ一つに、
自らが持つ建築魔法の『能力付与』を使って、
ラビ子とウサ太を強化する為の能力を付与してから、
其々に2つづつを手渡した。
「はい!ありがとう御座います!シュウ様
うわ~、このブレスレットに掘り込まれている
耳に大きなリボンを付けて、
スカートを穿いてるネコちゃん、カワイイですね!」
「そんなに喜んでくれて、俺も嬉しいんだが、
ラビ子、そのネコの姿形を余り詳細に語ると、
事案が発生するから控えてくれるか?」
「はぁ・・・?何か、良くは分かりませんが、
控える様に致します。」
「シュウ兄ちゃん!オレのウデワにホってある、
この、ホシのモヨウがはいってる
タマをもってるドラゴン「スト~ップ!」うん?」
「良いか?ウサ太、
その龍に関しても、余り詳細に語ってはイケないんだ」
「ふ~ん、ナンかよく分からないけど、
いわないようにするよ、
でも、このドラゴンってカッコイイな!」
「おう!凄ぇ力を持った龍だからな、
ウサ太にも凄ぇパワーを与えてくれると思うぞ」
「シュウ様、このブレスレットって、
どの様に分割すれば宜しいのでしょうか?」
シュウが、ブレスレットを仕上げ加工する際に、
輪っかを2つに分離出来る様へと、
細工を施していたのを見ていたラビ子が尋ねる
「ああ、そうだったな、
一見しただけじゃ分からない様に加工してあるから、
それを、2人には教えとかなきゃな、
ほら、この部分を良く見てみろよ、
木目に合わせて目立たなくなる様に細工してあるんだが、
良く見ると細いスジが入ってるだろ?
この部分に少し捻りを加えながら、
軽く引っ張ると・・・ほら、外れた。」
シュウが、2人に見え易い様にと、
2人の目線に合わせた位置でブレスレットを捻ると、
木製の知恵の輪の様に2つに分かれた。
「シュウ様に教えて頂かなくては、
全然、合わせ目が分かりませんでした!
本当に、金具を使わずに、この様な仕掛けが施せるのですね・・・」
「あっ!ちゃんとオレのもハズれたよ、姉ちゃん」
目の前で、見事に分離したブレスレットを見て、
ラビ子は感嘆の声を上げ、
ウサ太は、シュウと同じ様に自分のブレスレットをいじって、
無事に分離に成功した様であった。
「良し!そんじゃ、自分じゃ、
自分の手首には着けにくいだろうから、
お互いに、相手の手首に着け合ってみろよ」




