継続は力なり
「よし、そんじゃ次に、
大まかな形に切り出した木の輪に仕上げを施して行くぞ、
これも、俺とケンが持ってる建築魔法で行うんだ
『造作』・・・うん、こんなもんだな」
シュウが呪文を唱えると、
木材から、荒削りに取り出されてゴツゴツとしていた
木の輪の表面が滑らかになり、
艶のある光沢を帯びた物へと変化した。
「腕輪の表面が、とても美しくなりました!シュウ様」
「うわ~、すっげぇキレイになったな!シュウ兄ちゃん」
「おう!あとは、この腕輪の表面に、
さっき、ラビ子とウサ太からリクエストした
好きな動物の模様を彫り込んで、
腕に着け易い様に細工をすれば完成だな!」
「それも、魔法で行うのですか?」
「そのままでも、すげぇカッコイイんだけどな」
「いや、『造作』を使って出来ない事も無いんだが、
俺やケンにすると、今一つの出来栄えなんだよな・・・
余り長く使わない様な簡易施設なんかなら、それでも良いんだけど、
今回の様な、長く見に付ける物を造る場合は、
やっぱ、納得の行く様に仕上げたいからな、
という訳で、最後の仕上げだけは手作業で行うって訳だ。」
「私と弟が身に付ける物に、それ程の御気使いを頂きまして、
本当に、ありがとう御座います。
シュウ様方は、建築魔法という便利な魔法を身に付けられてからも、
職人としての拘りの心は御持ち続けられておられるのですね」
「オレ、シュウ兄ちゃんや、ケン兄ちゃんが、
何かつくってるところを見るのって、おもしろいから好きなんだ!」
「まあ、ホントに忙しい時なんかは、
それ程に、手間を掛けていられないけど、
今は、それ程でも無いからな、
それに、偶には自分の手をちゃんと使わないと、
折角、苦労をして身に付けた技術が錆び付いちまうからな、
この一手間は、自分の為でもあるって訳さ」
ラビ子に礼を告げられたシュウは、
照れくさそうな表情を浮かべながら、そう言った。
「はい、私も偶には自分で調理をしないと、
母から教わった料理の手順を忘れてしまいそうで怖いです。」
「兄ちゃん、オレ、母ちゃんのお店で、
お皿を並べたり、洗ったりするウデマエが、
プロキュウだって、お客さんにホメられたんだぜ!」
「そう言えば、村や街に泊まってる時は、
食事の方は用意されてばかりだからな・・・
そんじゃ、移動の時なんかは、
トレウスの台所を使って、ラビ子に飯を作って貰い、
ウサ太の給仕の腕前も見せて貰うとするかな?」
「はい!腕に縒りをお掛け致しまして、
御馳走いたしますので楽しみにしてください!」
「オレの、スーパーなキュウジのウデマエを、
兄ちゃんたちにも見せてやるぜ!」
「おう!楽しみにしてるぜ」




