柿の木もシブいよね~
「よ~し、そんじゃ、
まず初めにラビ子とウサ太の2人は、
ここに積み上げてある木材の中から、
好きな色合いの物を選んでくれるか?」
シュウとケンの愛車・加工場・倉庫・住居を兼ねる、
通称『トレウス』の荷台に広がる、
広大な謎空間へと乗り込んだシュウ一行は、
まずは木材の倉庫を訪れていた。
「わ~、同じ木材と言っても、
木の種類によって、こんなにも違った色合いになるんですね」
「すっげぇ沢山の木材だけど、
これって、みんな兄ちゃんたちがとって来たのか?」
驚いた表情で、大きく目を見張っている、
ラビ子とウサ太姉弟の目前には、
縦横が33センチ・長さが3.6メートル程の長さに加工された
様々な種類の木材が、その種類別に分けられ、
1種類ごとに数十本単位の量が堆く積み上げられていた。
「ああ、こっちの世界に生えてる木って、
その森々によって植生が多様に富んでてな、
しかも、切り倒しても、空気中に含まれている魔素とかのお蔭で、
若木がアッという間に成長するって聞いたもんだから、
移動の最中に森を見掛ける度に、
調子に乗って伐採していたら、こんなに在庫が溜っちまったんだよ」
「地球では見た事が無い種類の木とかも結構あって、
色々と試して使ってみたいもんね」
「なる程、それで、種類が違う木材が大量に揃っているんですね、
食堂を営んでいた母も、市場で変わった食材を見掛けると、
必ず沢山購入して、色んな料理にチャレンジしていたので、
シュウ様方の御試みも良く分かります。」
「たまにシッパイして、すっげぇマズくなる時もあったけどね」
「おう!という訳で、在庫はタップリとあるから、
好きなもんを自由に選んでくれや!」
「身に付ける物になると思うから、
色合いプラス、肌触りとかも考えた方が良いと思うよ」
「はい、分かりました。」
「そんじゃ、姉ちゃんといっしょに選んでくるね」
2人は、大量に積み上げられた木材の中から、
好みの物を選びに向かった。
「シュウ兄ィ、2人に何を造ってあげるのかは分からないんだけど、
僕も手伝った方が良いのかな?」
「いや、簡単なアクセサリーっぽいもんを造って、
それに『能力付与』をするだけだから、俺だけで十分だぞ、
ケンは、昨日の夜に打ち合わせた寸法で、
柱とか板とかを加工しててくれるか?」
「オッケー、そんじゃ先に行ってるね」
ケンは、そうシュウに告げると、
一足先に、木材倉庫に隣接した加工場へと歩いて行った。
「シュウ様!ご足労を頂いても宜しいですか!」
「シュウ兄ちゃん!オレも姉ちゃんも決めたよ!」
暫くすると、木材を選びに行っていた2人から、
暇そうにして鼻歌を嗜んでいたシュウへと、お呼びが掛かった。
「おう!決まったか?」
シュウは、待ち侘びた様に早足で2人の元へと向かった。
「私は、こちらの木が好きです。」
ラビ子が、白っぽい色合いで、
スベスベとした木肌を持つ木材を指差しながら、そう告げた。
「おう!ラビ子は、このアオダモっぽい木だな」
シュウは、そう言うと建築魔法の『切り出し』によって、
木柱の頭を10センチ程の長さでカットした。
「オレは、こっちの木!」
ウサ太の選んだ木材は、黒っぽい色合いで艶が有り
見た感じ、かなりの硬質と見られる物を選んでいた。
「へ~、黒檀っぽいもんを選ぶなんて、
ウサ太、お前なかなかシブい趣味してんな~」
シュウは、そう言いながら、
先程と同じ様に木材をカットした。
「そんじゃ、其々の材料が決まったから、
これから加工場に行って、
お前らが身に付ける『ナンチャッテ魔導具』を作成するぞ」
「ナンチャッテ・・・魔導具ですか?」
「それって、ふつうのマドウグとは、
何かチガうのか?兄ちゃん」
「ああ、この前、商業ギルドで聞いたんだけど、
俺やケンが造る、魔法効果が付与された家具なんかは、
一般に売られている魔導具とは、厳密には別もんなんだってさ、
だから『ナンチャッテ魔導具』って、俺が銘々したんだ。」




