マッコリ コリ助
「ただいま~」
商談を終えたシュウが、
この街で宿泊をしている『ホテル ニューコシガヤ』の、
自分達の部屋の、入り口ドアを開けながら告げる
「お帰りシュウ兄ィ、意外と早かったね」
「お疲れ様です。シュウ様」
「おかえり、シュウ兄ちゃん」
部屋のリビング・スペースで魔導映写機の映像を見ながら、
お茶を飲んで寛いでいたケン、ラビ子、ウサ太の3人が、
思い思いの言葉で、それを出迎えた。
「ああ、思いの外、商談が早く進んでな、
商談の相手だった街長さんの所と、
イイネさんや、ギル・マスが懇意だったってのもあるけど、
相手方に知り合いが居たってのも良かったな」
「え?街長さんの方に、
シュウ兄ィの知ってる人が、誰か居たの?」
この街に来てから、然程に時間が経っていない事を鑑みたケンが、
そう質問をする
「ああ、前に話した
このホテルの、屋上露天風呂で偶々行き会って、
少し話をしたっていう、商会の会長さんって名乗ってた人が、
実は、この街の街長さんの執事兼ご意見番的な人だったんだよ」
「へ~、それは中々の偶然だよね、
その人との会話で、シュウ兄ィは緊急避難用の地下シェルターを、
街に設置する事を思い付いたんだもんね、
一から地下シェルターの有用性を説明するよりかは、
遥かに早く話が進むのも頷けるよね」
「何気ない他者との出会いが、
如何に重要かを考えさせられるエピソードですね」
「シュウ兄ちゃんの運が良いってのもあるよな」
「おう!そんな訳で、スムーズに商談が纏まった訳なんだけど、
日本の地下街とかで、大型の地下施設を知ってる俺やケンと違って、
こっちの人達には、その有用性は理解出来ても、
どんな物が出来上がるのかってのが今一理解出来ないだろうから、
明後日、街長さんの館の地下に、
モデルルーム的な、小さなシェルターを造る事になったんで、
ケンも予定しといてくれるか?」
「オッケー、分かったよシュウ兄ィ」
「シュウ様、ケン様、私達にも何か御手伝いをさせて下さいね」
「オレも手伝うぜ!」
「ラビ子達の手伝いか・・・うん、何かしら考えとくわ、
ラビ子、俺にもお茶を淹れてくれるか」
実家が食堂を経営していた事もあり、
このメンバーの中で一番、お茶を淹れるのが上手なラビ子に、
ドッカリと、リビングのソファに腰を下ろしたシュウが注文をした。
「はい、シュウ様、いつもの様に緑茶で宜しいですか?」
「ああ、それで頼む」
「畏まりました。
ただ今、お淹れして参りますね」
ラビ子が、リビング・スペースの一角に設けられた
ティーサーバーのセットの方へと向かった。
「・・・そんで、さっきから気になってたんだけど、
この魔導映写機で今、放送されてる、
アニメ?っぽいヤツって、何て題名の番組なんだ?」
自分のお茶を淹れに向かってくれたラビ子を見送ったシュウは、
徐に、残りのケンとウサ太に向かって質問をする、
リビングに据え付けられた大型の魔導映写機の画面には、
ズングリムックリした体型のモンスターと、
幼い姉妹との交流を描いたと見られる、
アニメらしき番組が放映されていた。
「ああ、ソレ?
僕も見てビックリしたんだけど、
『向こう隣りのトントロ』ってアニメらしいよ」
「地球の某大国もビックリの、『やっちまった度』だな!」
「アニメ大国の日本で生まれ育った僕達は兎も角、
こっちの世界の人にとっては、
かなり斬新な設定の、超人気アニメ番組らしいよ」
「ああ、本物のモンスターがいるコッチじゃ、
子供がモンスターと仲良くするなんて、
とてもじゃ無いけど、考えられないだろうからな」
「うん、だから、番組の最初に、
『これは、飽く迄も架空の世界の話しだから、
良い子のみんなは、モンスターに絶対に近づかない様にね』って、
しつこい位に流していたね」
「まあ、そりゃそうだよな、
このアニメを見た子供が、モンスターと仲良くしようとして近付いて、
食われちゃったとかいったら、シャレにならんからな」




