ダクゾウの過去
「勿論、ワタクシめにも多大なるメリットが見込めますとも、
こうやって、同郷の方々との顔を繋げれば、
もし、その方々の内の何方かが、
日本へと帰れる方法を見付けられた際に、
同行を願い出られるやも知れませんからね」
フムゾウ改めダクゾウは、シュウらの問い掛けに対して、
そう返答を返した。
「へ~、やっぱダクゾウさんも日本に帰りたいのか、
こんなに繁盛している店を経営してるんだから、
こちらでの生活に満足してるのかと思ったよ」
「そうだよね、まだ晩御飯には早い時間帯にも関わらず、
ほぼ満席の状態だもんね」
シュウとケンは、50席はあると思われる店内が、
ほぼ埋まっている現状を見渡しながら、そう告げる
「帰りたいですとも!
元々、この店も、日本へと帰れる手段を探す為の、
資金稼ぎとして始めた店ですからな、
もし帰れる手段が見つかった暁には、
こちらの世界の従業員に全ての権利を譲り、
念願の日本への帰還を果たすつもりですぞ!」
「これだけ、繁盛して居たら、
帰る為の手段探しの資金は、もう集まってるんじゃ無いのか?」
「そうだよね、冒険者の人に依頼を出すとかしないんですか?」
「はい、資金自体は、ある程度の金額集まっているのですが、
誰かに依頼をするというのは、少し怖いですからな、
こちらの事情を何も話さずに依頼を出来るとは思えませんし、
先程も、お話致しましたが、私が日本から来たという事を、
外部の人物に知られるのは、ちと怖いですからね」
「なる程な・・・さっき自分でも、
腕っぷしには自信が無いって言ってたもんな、
お金を払って依頼をする冒険者とはいえ、
見ず知らずの相手に、自分の境遇を話すのには躊躇するよな」
「その資金を使って、自分で探そうとは思わなかったんですか?」
「はい、シュウ様の仰る通りであります。
それから、ケン様が仰る様に、
こちらの世界へと来た当初は、色々と自分で探し回りはしたのですよ、
ワタクシが、こちらの世界へと来たのは、
今から7年程前になるのですが、
最初の1年は、腕時計や、身に付けて居たアクセサリーを売却し、
その資金にて方々へと探しに出たのですが、
残念ながら帰れる手段を見つけ出す事は出来ずに、資金が底を尽き、
調べていた際に目にした過去の文献にて、
こちらの世界へと来た先達の方々等の多くが、
日本で食したカレーの再現を夢見ていたのを知り、
資金を集める為の手段としての意味もあって、
このカレーショップを始めたという訳で御座います。」
「俺達も作ろうとして失敗したんだが、
よく先達らが成し得なかったカレーの再現に成功したよな、
しかも、日本の人気チェーン店にも引けを取らない出来栄えだぜ」
「そうだよね、とてもじゃ無いけど、
素人が辿り着ける様なレベルの味じゃ無いよね」
「お褒めに与り光栄で御座います。
じつはワタクシ、日本に居た頃は、
海外の香辛料を、日本へと輸入する業務に付いて居りまして、
御二方も御存じの通り、日本はカレー大国で御座いますから、
有名なチェーン店様などにも、御品物を納めさせて頂いたので御座います。
また、商品を開発する際には、ご協力などもさせて頂いて居りましたので、
スパイスの調合割合なども、ある程度は御承知していた訳であります。」
「そりゃ凄ぇな!
俺達なんか、カレー粉があっても作れなかったっていうのに、
香辛料から集めたっていう事だろ?」
「こっちの香辛料が、地球と全く同じとは思えないしね・・・」




