ド~ン!
「う~む、何にするか迷うな~
だが、やはり、ここは日本に居た頃に好きだった
チキンカレーに似てると思われる『ホロホロ鳥カレー』を、
ライスで注文するとするかな・・・」
メニュー表を見ながら、シュウが呟く
「僕は、同じくライスで、
この『マッド・パイソンのカレー』にしようかな」
シュウの呟きを聞いたケンが告げる
「私たちは、カレーという料理を初めて食べるのですが、
初めての、お薦めメニュー的なものは何かあるのでしょうか?」
「オレは何でも良いから、
姉ちゃんと同じので良いな」
そんなシュウ達に、ラビ子とウサ太の姉弟が尋ねる
「そうだな~、やっぱ日本の定番と言えばポークだったから、
この『シモフーリ・ボアのカレー』ってのが良いんじゃ無いか?」
「そうだね、まずはポークからが基本だよね」
「では、私達は、それをライスで頂く事とします。」
「うん!そうしよう、そうしよう!」
「俺達は食べ慣れてるからライスで良いけど、
ラビ子たちは、ナンを貰った方が良いんじゃ無いか?」
「僕達に合せる必要は無いんだからね」
「いえ、一日も早く、
シュウ様や、ケン様が好まれるカレーの味へと到達する為にも、
ここは、御二方と同じライスで頂く事とします。」
「オレも、ライスは好きだから良いよ、兄ちゃんたち」
「まあ、ラビ子がカレーを作れる様になれば、
確かに、俺達も嬉しいんだが、
そこまで、真剣に取り組まなくても良いんだぞ?」
「別に、ナンよりライスが美味しく無いって、
訳でも無いんだから、
ここは、ラビ子ちゃんたちの好きにしたら、
良いんじゃないかな?シュウ兄ィ」
「まあ、それもそうか・・・よし!
そんじゃ、店員さんを呼んで注文するとするか」
シュウが、店員に声を掛けて呼び寄せると、
先程、銘々が選んだ注文を告げた。
暫くすると、ウエイトレスが抱えるトレイに乗せられた
湯気が上がるカレー皿が、其々の前へと運ばれて来る、
4人は、ウエイトレスが立ち去るのを見計らって、
シュウの音頭によって食べ始めた。
「よっしゃ!そんじゃ食べるぞ皆!
いただきます!」
「「「いただきます!」」」
「おおっ!俺好みの、某チェーン店みたいな、
堅めに炊いたライスと、粘りが少ないサラッと系のカレーじゃねぇか!
それに、このホロホロ鳥の肉ってのも、
ニワトリより野趣が溢れてて、
俺的には、こっちの方がカレーに合ってるって気がするな!」
「僕の、マッド・パイソンの肉も、
スプーンで、簡単に身が解れる程に煮込まれてて絶品だよ!」
「美味しいです!
一口食べただけで分かる程、
数多に及ぶと見られるスパイスが練り込まれてて、
奥深い、複雑な味わいを醸し出して居ます!」
「うまっ!うまっ!うまっ!」
「う~む、素晴らしい仕事だ!
褒めて遣わすぞ!シェフだ!シェフを呼べ!」
余りの美味しさに、テンションが上がったシュウが叫ぶ
「シュウ兄ィ、確かに、凄く美味しいのは分かるけど、
ちょっと、テンションが上がり過ぎじゃ無い?
お店とか、他のお客さん達に迷惑だよ」
ケンが、そんなシュウを嗜める発言をする
「あっ、厨房の方から誰か出て来られましたよ、
変わった服装を、されていらっしゃいますけど、
シュウ様の、呼び掛けで出ていらした所から見ると、
シェフの方なのですかね?」
ラビ子の言葉に、シュウとケンが厨房の方へと目を向けると、
全体的に丸みを帯びた体格で、
日本の昔のビジネスマンの様な、黒いスーツっぽい服装に身を包んだ男が、
シュウ達の、テーブルの方へと歩いて来るのが目に入った。
「おっ、俺の呼び掛けに答えて、
シェフの人が来てくれたのかな?
こりゃ、宣言通りに礼を言わんきゃならんな」
「そうだね、美味しいカレーを食べさせてくれた
お礼を言わなきゃね」
シュウとケンが、マナーを守る日本人に相応しく、
テーブルの上に置かれたコップの水を、
口に含んで濯いでいると、
そこに、やってきた黒尽くめの男が、
シュウらに向けて、こう告げた。
『オ~ホッホッホッ、私の名前はウンチ・フムゾウ
人呼んで、臭うセールスマンと呼ばれております。ベ~ン!』
「「ブ~ッ!」」
シュウとケンは、口に含んだ水を噴き出した。




