ハツコヒのオモヒデ
「うむ、それで、ワシの嫁ディードリットットット・・・
嫁の名前ながら、ちと長すぎて呼び辛いのう、
ここは、いつもワシが使う呼び名の『トッっあん』で、
呼ばせて貰うぞ」
話しを商業ギルドのマスターである、
ドングリーノとの確執へと戻した
建築業ギルドのマスターであるメークソは、
少し期待を込めた様な表情で、そう告げる
「三代目の怪盗か!」
「おお!それじゃよソレ!
それでこそ、話も進むと言うものじゃ」
「はぁ・・・もう、どうでも良いんで、
肝心の、話の方を進めて下さい。」
「うむ、ではホントの呼び名の『トットちゃん』で、
話しを進めるぞ」
「窓際か!」
「いや、こっちはホントの呼び名じゃ、
残念じゃったな、シュウよ」
「何で、俺が失敗したみたいな感じになってるんだよ!」
「ちょっと、何言ってるか分からない」
「分かれよ!って言うか、
何で、そのボケ知ってんの!?」
「うむ、それで、シュウのツッコミの所為で、
脱線した話を戻すが「俺の所為かよ!?」
トットちゃんは、今まで里のエルフ達が、
苦手な金属の臭いがする、釘や金具を已む無く使いながら、
家を建てて居たのに対して、
一切、金属を使わずに家を建てて行くワシらの仕事振りに、
いたく感動した様でな、
毎日の様に建築現場を覘きに来て居る内に、
丁度、年回りが近かったワシと親密になったという訳じゃな」
「なる程、確かに年が近い方が、
話し易すそうですもんね」
「うむ、それで、長きに渡るエルフの里での、
一大建築事業が終わり、
いよいよ、ワシらの街へと帰る事となった際に、
思い切って、トットちゃんにプロポーズをしたところ、
良い返事を貰えたと言う訳じゃ・・・」
「へ~、ギル・マスも思い切りましたね」
「うむ、もし断ったら、
『今後、エルフの里へと宮大工を派遣しない』と、
言ったのが利いた様じゃな」
「脅迫か!」
「まあ、冗談は扨て置いて、
この街へと、トットちゃんを連れて戻ったのを見た時の、
ドングリーノめの顔は見ものじゃったぞ」
「ディードリットットットさんって、
お姉さんに似てるんですか?」
「うむ、年は3つ離れてるんじゃが、
見た目は双子の様にソックリじゃな、
姉が、大人しく淑やかなのに対して、
ウチのヤツは、活発で気風が良いんじゃが、
そんなもんは、黙って立ってたら分からんからな」
「へ~、それじゃまた、
ドングリーノさんが、ディードリットットットさんに、
惚れちゃって大変だったんじゃ無いんですか?」
「うむ、ワシも、そう思い、
嫁の事をタップリと自慢して、
アヤツめに悔しい思いをさせてやろうと、思ってたんじゃが、
アヤツの、ディードリットット嬢への思いを、
少し、甘く見過ぎて居ったな・・・」
「えっ?どうしたんですか?」
「うむ、アヤツめは、
一目で、ウチのヤツと、ディードリットット嬢が別人と見抜くと、
ワシが、トットちゃんで『妥協した』などと言って来たんじゃ、
確かに、トットちゃんと出会った頃のワシは、
まだ、ディードリットット嬢への思いに諦めが付いていたとは言い難いが、
毎日の様に、トットちゃんとの楽しい会話を重ねる内に、
良い思い出へと変わって行ったんじゃよ」
「まあ、若き日の憧れの思いってのは、
誰もが、そんなもんですよね・・・」
あけオメ~ことヨロ~(^o^)/




