あの人は今・・・
「うん?ネタ?何の事じゃ?」
シュウの言葉に、建築業ギルドのマスターであるメークソが、
不思議そうな顔で問い掛ける
「い、いや、こっちの事なんで、
気にしないで話を続けてくれ」
「うむ、では続けるが、
彼女は、まさに地上に舞い降りた女神様の化身の様に美しかった。
彼女が一歩、教室へと足を踏み入れた瞬間、
男子生徒は元より、女子生徒さえも、
その美しさに魅了されて、呆けた顔を晒しておったな・・・」
「へ~、普通、綺麗な人って同性には嫌われそうだけどな」
「それは、人での基準の話しじゃろ?
彼女は、まさに従人の範疇には収まらない程の、
美貌を有しておったんじゃ」
「そりゃ凄いですね」
「うむ、当然の様に、
ワシも、ドングリーノのヤツも魅了されての、
彼女に相応しい男となれる様に、今まで以上に、
競い合いに拍車が掛かったという訳じゃ」
「ドングリーノさんが、あれだけ、
ギル・マスに敵愾心を持っているという事からすると、
ディードリットットさんのハートは、ギル・マスが射止めたって事ですか?」
「いいや、それなら良かったんだが、
彼女の心を奪ったのは、それといった目立ったところが無い、
人族の剣士『ババババ~ン』が、かっさらって行き居ったのじゃ」
「それじゃ、何でドングリーノさんは、
あんなに、ギル・マスの事を憎んでいるんですか?」
「それがの、ディードリットット嬢は、
穏やかな平和を愛するエルフに相応しく、
穏やかな性格の男が好みらしくてのう、
日々、競い合うワシらの様な男には興味が無いと言われたんじゃ、
それを聞いたアヤツめが、
何かと勝負を挑んで来たワシの所為だと、難癖を付けてきてのう、
売り言葉に、買い言葉で、大ゲンカとなり、
それ以降、絶縁状態なんじゃ・・・」
「ドングリーノさんも、どっちもどっちだとは理解していても、
怒りのやりどころに困って、そう言っちゃったんでしょうね」
「うむ、ワシかアヤツめが選ばれていれば、
まだ諦めも付いていたんじゃろうが、
彼女が選んだ男は、ホントに目立ったところが無かっただけに、
アヤツも治まりが付かなかったんじゃろうな」
「その、バババ~ンさんでしたっけ?」
「いや、ババババ~ンじゃ」
「ああ、そうですか、
ババババ~ンさんって「いや、ドバババ~ンじゃ」
えっ?ギル・マス、ババババ~ンって言ってませんでしたっけ?」
「うむ、それで合っとる、
ちょっとしたドワーフ・ジョークじゃよ」
「ぶっ飛ばすぞ!ジジィ!」
メークソの言葉を聞いたシュウは、
アッパーカットの様な形に、拳を突き上げながら、
大きな声で叫んだ。
「お~!ナイスなツッコミじゃぞ、シュウよ、
ツッコミは、『迅速に、大きな声とリアクション』が基本じゃからな、
お主、中々オワライという物を理解しとる様じゃな」
「えっ?ギル・マス、ツッコミとか、お笑いとか、
何で知ってるんですか?」
「うむ、オワライに関しては、
今から150年程前に、異世界により勇者として召喚された
自称、オワライゲイニンとかいう謎な職業の、
『トロ・クボータ』という、非常に口が悪い人物から伝わっておるからな、
今では、かなりの人数の弟子たちが、
クボータ氏が起こしたと言われて居る
『サーモン流・オワライ道場』で、腕を磨いておるよ」
「へ~、日本で、いつの間にか見なくなってる、
お笑いの人達って、
こんな風に、異世界に呼ばれて来ちゃってたりも、するのかな・・・?」




