秘伝
「こんちは~」
ピョロリの街の商業ギルドに、新たな商売の種として、
災害時の避難用地下シェルターの建設を提案したシュウは、
建設に伴い、その協力が不可欠と思われる建築業ギルドへと、
商業ギルドから貰った紹介状を携えて訪れていた。
「いらっしゃいませ!
当、建築業ギルドのピョロリ営業所へ、ようこそ!」
建築業ギルドの、入り口のドアを開けて入って来たシュウに対し、
受付カウンターの受付嬢が、元気に挨拶の声を掛けて来る
「ああ、こちらこそ、よろし・・・イイネさん!?」
挨拶の声に、返事を返しながら視線を送ったシュウの目には、
先程、商業ギルドで別れたばかりのイイネが、
ニコニコと笑みを浮かべながら、
受付カウンターへと佇んでいる姿が見えた。
「あら?姉を御存じ何ですか?」
「えっ?姉?
そんじゃ、貴女はイイネさんじゃ無いんですか?」
「はい、私はイイネの双子の妹で、
『アイソ・ソトヅーラ』と申します。」
「へ~、ギルドの制服以外は、
見分けが付かない程にソックリですね・・・」
「はい、姉と私は一卵性双生児なので、
子供の頃から、見分けが付かないと良く言われて居りました。」
「なる程、一卵性ですか・・・道理でソックリな訳ですね」
「ええ・・・ところで本日は、どの様な御用命で当ギルドへと、
参られたのでしょうか?」
「ああ、そうだった、そうだった。
俺は、建築業ギルドに、大工職で登録しているシュウという者なんだが、
商業ギルドと、建築業ギルドとに絡みそうな、
新しい仕事のネタを持って来たんで、ギル・マスに取り次いでくれないか?
この通り、商業ギルドからの紹介状は貰って来てるんだ」
シュウは、自らのギルドカードと、
商業ギルドから貰って来た紹介状をアイソへと差し出しながら、そう告げた。
「そうなのですか、少々拝見いたしますね・・・えっ!?
この紹介状に、最近、当ギルドでも話題になっている、
能力を付与した家具類の製作者が、
シュウ様だったと書かれて居りますが、ホントですか!?」
ギルドカードと紹介状へと、ざっと目を通していたアイソが、
驚きの表情を浮かべながら、シュウに尋ねる
「あ、ああ、確かにアレらを造ったのは、
俺と、弟のケンだが、それが何か?」
「実は、あの家具類が大変話題となっていて、
当ギルドへも『同じ品物を造れないか?』という引き合いが、
多数、寄せられているんですよ・・・」
「え?建築業ギルドへか?」
「ええ、建物への造りつけの家具の製作などもあるので、
シュウ様方の様に、家具造りが得意な大工の方々って、
結構、いらっしゃるんです。」
「ああ・・・確かに、ベットとか本棚とかを、
建物に造り付ける事なんかがあるからな」
「はい、そう何です。」
「それで、あの家具類が如何かしたのか?」
「はい、余りにも引き合いが多いものですから、
宜しければ、その作成方法などを、
当ギルドで、買い取らせて頂こうかと思いまして・・・」
「う~ん、多分だけど、
そりゃ無理だと思うぞ」
「やはり、職人としての秘伝の様なものだから、
お譲り戴いたりするのは、無理なのでしょうか?」
「いや、あれは、俺達兄弟の特殊な魔法で造ってるもんだから、
他の人には、真似できる類のもんじゃ無いと思うぞ」




