ライバル
「お客様を、お待たせしてしまい申し訳無かったね、
私が、『ピョロリの街』の商業ギルド・マスターを務めさせて頂いている、
『ドングリーノ・セクラベー』だ、よろしく頼むよ」
書類の処理を終えたらしきギル・マスが、
シュウの、テーブルを挿んだ正面のソファに腰を下ろしてから、
徐に、そう告げた。
「ええ、俺の方が突然押し掛けたんだから、
それは、お気になさらずに・・・
俺は弟と一緒に、大工業や家具製作なんかをしている、
シュウという者だ、よろしくな」
「ギル・マス、お茶を淹れますが、
何にしますか?」
給仕を務めるイイネが問い掛ける
「ああ、私はコヒ茶を頼むよ、イイネ君」
「畏まりました。」
イイネは、ギル・マスにコヒ茶を、
そして、自分の分の紅茶を用意すると、
ギル・マスの隣へと腰を下ろした。
「では、早速だが、話を聞かせて頂けるかね?」
イイネが席に着くのを見計らい、
ギル・マスが、そう発言をした。
「はい、私の方から御説明をさせて頂きますが、
今回、シュウ様から、お話を頂いたのは・・・」
ギル・マスの言を受けたイイネが、
シュウの持ち込んだ、避難用の地下シェルターの説明を始める
「う~む、なる程、
ドラゴンの様な、大型の魔獣というのは、
人間の魔力に魅かれて街を襲うというのが定説だからな、
人が多く集まる大都市ほど襲われ易いと考えるなら、
シュウ殿が今回、御提案をされた
地下シェルターなるものは有効なのであろうな、
今までの様に、多くの犠牲者を出して、
街が滅びたなどという悲劇を回避できると思える」
「ああ、俺も、そう思うぜ」
「しかし、これ程の一大事業となれば、
確かに、大きな利益が見込めるが、
まずは、街長様を始めとした、お役所関係や、
各種団体への根回しなども必要になるな・・・」
「ええ、ギル・マス、
それで、シュウ様から、街長様への御紹介や、
建築業ギルドへの、協力依頼の口利きなどを頼まれているのですが・・・」
「何!?建築業ギルドだと!?
あんな所と協力する必要など無いぞ!
我が商業ギルドで、みな何とか出来るとも!」
「ギル・マスは、どうしたんですか?イイネさん」
「はあ、実は、ウチのギル・マスと、
建築業ギルドのギル・マスは、学生時代からのライバルらしくって、
日頃から、とても仲が悪いんですよ・・・」
「へ~、お互いに一大組織のリーダーまで上り詰めてるんだから、
2人とも優秀なんだろうけど、馬が合わないってヤツなんですかね?
でも、今回に限っては、お互いの組織の利益に関わる事なんだから、
我慢をして貰うしか無いですよね」
「はい、ウチのギル・マスの方は何とか説得してみますから、
御紹介状の方を御用意致しますので、
シュウ様は、建築業ギルドへと、今回のお話を持って行って頂けませんか?」
「ああ、それは別に構わないんだが、
街長さんの方は、如何するんだ?」
「街長様は、大変お忙しい方ですので、
お会いするのにも、事前に予約をせねばなりませんから、
ウチと、建築業ギルドとの話が、
ある程度進んでからにした方が良いと思われます。」
「なる程、分かった。
そんじゃ、取り敢えず俺は、
建築業ギルドに、協力をして貰う事を取り付けに行ってくるわ」




