商談
「おはよ~っす!」
翌日となり、ケンらと共に朝食を摂ったシュウは、
食休みをしてから、昨夜の打ち合わせ通りに、
ピョロリの街の商業ギルドを訪れた。
「あら、お早う御座います。シュウ様
昨日の、今日で御越しとは、
私共で、ご紹介を致しました宿泊施設にて、
何かしらの不手際でも御座いましたでしょうか?」
商業ギルドのカウンターには、
昨日同様に、イイネが座って居た。
「いいや、紹介して貰ったホテルは、
風呂も食事も最高で、俺を含めた皆も満足してるぞ、
今日、ここへと来たのは、
新しい金儲けの仕方を考え付いたんで、その相談に来たんだ。」
「まあ!今現在でも、当ギルドの売り上げ向上へと、
多大なる御貢献を頂いて居りますのに、
また、新たな御商売の種を考え付かれたんですか!?」
「ああ、使うのが非常に特殊な魔法なんで、
残念ながら、俺とケンじゃなきゃ儲からないんだけど、
実際にゴーサインが出るとなれば、
商業ギルドや、建築業ギルドの売り上げに貢献出来ると思うぜ」
「分かりました。
是非、その御内容を、お伺いさせて頂きたいと思いますが、
情報が外部へと漏れると困りますので、
当ギルドの会議室の方まで、ご足労をお願い頂けますか?」
「おう!まあ聞いたところで、
俺やケンの真似が出来るとは思わないけど、良いぜ」
「ありがとう御座います。」
イイネは、他の職員へと声を掛けてカウンター業務を代わって貰うと、
シュウを案内して、商業ギルド内にある会議室へと向かった。
「それで、その、新しいお仕事というのは、
どの様な物なのでしょうか?」
会議室へとシュウを案内したイイネは、
シュウから注文を聞いて、コヒ茶を淹れ其々の前のテーブルの上に置いてから、
シュウの正面の席へと腰を下ろし、そう尋ねた。
「実は、昨夜の事なんだがな・・・」
シュウは、昨夜、ホテルの浴場で出会った、
どこかの商会の、重要人物と思われる老人と交わした会話から、
その後、ケン達と打ち合わせた内容を、イイネに語り聞かせた。
「それは・・・確かに、その事業を実現出来れば、
当商業ギルドと、建築業ギルドに取りましては一大事業と成り得ますが、
本当に、シュウ様と、ケン様の魔法を使えば、
その様な安価で、地下シェルターなる物が造れるのでしょうか?」
シュウから、2人の魔法を使えば、
十分に、大きな利益が見込めると聞いたイイネは、
通常の、土魔法使いや、人力にて作り上げる地下室建造に掛かる、
多大なる費用を思い浮かべながら、疑問を投げ掛けた。
「ああ、イイネさんが考えているよりも、
とんでもなく安く造れると思うぜ、
イイネさんの印象だと、俺達兄弟は、
腕の良い家具職人ぐらいに思ってるかも知れないけど、
俺とケンの本業は大工なんだよ、
しかも、『建築魔法』っていう、建物の建造に特化した
特殊な魔法を2人とも持ってる事だしな・・・」
「『建築魔法』・・・ですか?
確かに、初めて、お聞きする種別の魔法ですね」
「ああ、多分なんだけど、
この世界で、俺とケンの2人しか使えないんじゃ無いのかな」