防衛計画
「ほぅ・・・それは、なかなか興味深い話だね、
確かに、昔、ドラゴンに襲われた街の者が、
偶々、地下室に居て、奇跡的に助かったなどという話を、
私も聞いた覚えがあるからね、
街に、そういう場所を設けて置けば、
助かる命が増えるのかも知れないね・・・」
シュウが話す地下シェルターの話に、
自らを商人と話す老人が、興味を抱いた様子である
「ええ、でも、そのドラゴンに、
ずっと街に居座られたら、その避難所から、
なかなか出て来られないかも知れませんけどね」
「それについては、心配が要らないと思うぞ、
一般的に、ドラゴンは熱し易く、
同時に冷めやすいと言い伝えられておるからな、
ひとしきり暴れて気が住んだら、直ぐに居なくなるという話だ、
尤も、その僅かな一時で、街は壊滅状態となるのだがな」
「それなら、ある程度の保存食や水などを、
普段から備蓄して置けば大丈夫そうですね、
そう言えば、水を長期保存して置く方法とかってあるんですか?」
「うむ、長期間、外洋を航行する運搬船などに、
積み込んであるのだが、
水を積めた樽に、白魔法の『浄化』が付与された魔石を入れて置けば、
魔力が切れるまでの間、2年でも3年でも水が新鮮のままという話だぞ」
「へ~、そんなに便利な物があるんですね、
それなら、2~3日なら全然、大丈夫そうですね」
「うむ、食料や水に関しては心配要らんだろうな」
「そうなると、後は避難に要する時間とかになると思うんですけど、
さっきの話では、殆ど逃げる時間が無いんですよね?」
「うむ、さっきの話は、街から逃げ出す場合を想定しての話なので、
街の出入り口にある門へと、人が殺到したとしての話だな、
実際には、ドラゴンの体は非常に大きいので、
夜でもなければ、街の防護壁の上で警戒に当たっている警部兵が、
割と早めに発見をして、警戒を呼び掛けるぐらいの時間はあるであろうな」
「なる程、パニックを起こした人々が、
狭い門に殺到したら、却って逃げるのが遅くなりそうですもんね」
「それも、門の近くに暮らすか、
偶々、門の近くに居た者に限られるからな、
街の中心部に居ては、警戒の声を聞いてから逃げても、
到底の事、間に合わんだろうな」
「そうですね、そうすると、
街の中心部付近に、何か所か、そういった避難場所を設けると、
助かる人が増えるかも知れませんね」
「うむ、格段に増えるであろうな」
「こういった提案って、何処にすれば良いんでしょうか?」
「まずは、商業ギルドや建築ギルドなどだろうな、
そして、最終的には街の責任者である、
街長の与かる所となるであろう」
「そうですか、教えて頂きまして、ありがとう御座います。
幸いにも、両方とも顔が利きますので、
明日にでも、顔を出して聞いてみようかと思います。」




