災害対策
「ヴァァァーーー!」
『ピョロリの街』の商業ギルドが歓待をする為に手配した
高級宿泊施設『ホテル ニューコシガヤ』にある、
屋上大浴場の露天風呂の湯船へと、
その身を沈めたシュウが魂の叫びを上げる。
地球の全人類の中でも、
有数の風呂好きで、温泉好きでもある日本人のDNAには、
湯船に浸かった際に、魂の叫びを上げる様な因子が、
組み込まれているのではないかとシュウは考えていた。
ホテルの部屋で一人、魔導映写機を見ながら寛いでいたシュウの元に、
屋上大浴場から戻ったケンらが熱心に、その素晴らしさを語って聞かせた為、
夕飯前に、シュウも旅の疲れを流しに訪れたのであった。
「うん?何だ?」
陽が落ちて、大分、薄暗さが広がりつつある、
ピョロリの街並みを眺めていたシュウの目に、
街の防護壁の上空辺りでバチバチと青白い火花が上がるのが見えた。
「お兄さん、ここの風呂は初めてなのかい?」
そこに、シュウが入る前から湯船に浸かっていた人族の老人が、
そう話し掛ける
「え?ええ、旅の途中で偶々寄ったんですよ」
「おや、そうかい、
ここに、偶々寄って宿泊出来るとなると、
お若く見えるが、そこそこの人物のようだね・・・
ワシは、この街で商会を営んでいる者なのだが、
この風呂と、ここから見える眺めが好きで、
時々、入りに訪れているのだよ」
「へ~、そうなんですか、
確かに、この露天風呂からだと、
街が一望出来て眺めが良いですからね」
「ああ、ここから見るピョロリの街並みは最高だな、
そういえば、先程、あの光の事を気にしていた様だね」
そう言いながら指差す、老人の指し示す先の方向には、
先程、シュウが見た様な青白い火花が上がっていた。
「ええ、あの光って何なんですか?」
「あれは、街に張られた防護結界に、
飛行タイプの魔獣が当たって感電しているんだよ」
「へ~、そんなのが張られているんですね、
今まで、夜の街を、こんなに高い場所から見られるなんて、
機会が無かったんで知りませんでした。」
「まあ、これ程の高さがある、
建物が建っている街自体が珍しいからな」
「そうですね・・・
あの結界って、どの程度の魔獣を防げるんですか?」
「小型で複数、中型で数頭といったところらしいぞ」
「中型の魔獣でも、数頭だったら防げるんですね」
「ああ、中型でも、
自らの身が傷つくのを厭わずに突っ込んだら、
破れるかも知れないそうだが、
人よりタフな魔獣と言えども、
態々、痛い思いをするのは嫌だろうからな」
「そうですよね、魔獣だって生き物でしょうからね、
そうすると、大型の魔獣が来た時は、
街の人達の方が、逃げるしか無いって事なんですか?」
「まあ、そうなんだが、
防護壁に囲まれた街が、大型の魔獣なんぞに襲われた時は、
殆どの者が逃げ切れずに、魔獣の餌食となるしか無いだろうな」
「そうなんですか?」
「うむ、街の結界を物ともせぬドラゴンなんぞが来た時には、
そのブレスだけで、街の殆どが一瞬で焼き尽くされるであろうからな・・・」
「その、ブレスっていうのは、
シェルター的な物の中に入っていても防げないもんなんですか?」
「はて?そのシェルターというのは、どの様な物なのかな?」
「ああ、シェルターっていうのは、
災害時なんかに、一時避難する為に地下などに造る施設の事ですね」




