湯~ライオン
カコ~ン! うっすらとした湯気が立ち込める大浴場に、
湯浴み客が上げたと見られる、木桶の音が響き渡る、
ケンとウサ太は、広々とした大浴場を見て感嘆の声を上げた。
「すっげ~!見てよケン兄ちゃん、
中だけじゃ無くて、外にも大きな風呂があるよ!」
「ああ、あれは露天風呂っていうんだよ、
ここは、ホテルの屋上にあるから、眺めも良いんだろうね」
「ウサ太!大きな声を出して騒いで、
ケン様に、ご迷惑を掛けるんじゃ無いわよ!」
女湯の方に入っているラビ子から、
ウサ太に対する注意の声が上がった。
男湯と女湯とを隔てる壁は、天井までは伸びて無く、
上の方が空いているので、ウサ太の声が届いたのであろう
「そう言う、姉ちゃんだって大声出してるじゃん!」
「何ですって!?」
「まあまあ、2人とも、
折角、普段では入れない様な豪華なお風呂に来ているんだから、
ここは、ゆっくりと楽しむ様にしようよ」
「は、はい、お騒がせをして、
申し訳御座いません、ケン様」
「うん、分かったよ、ケン兄ちゃん」
一行は、落ち着いて風呂を楽しむ事にした。
「ウサ太君、あの、口からお湯を吐き出している大きな石像の魔獣は、
何かモデルになった魔獣が居るのかな?」
洗い場で体を洗い、最初は内湯へと、
ウサ太と共に入ったケンが、ウサ太に尋ねる、
ケンの視線の先には、全長2メートルはあると思われる、
地球のライオンに似ている感じの魔獣らしき石像が、
犬のお座りの姿勢で、大きく開いた口からザバザバとお湯を吐き出していた。
「ああ、あれだったらキマイラだよ、ケン兄ちゃん
ホラ、尻尾がヘビになってるだろ?
あれが、キマイラの特徴なんだってさ」
「へ~、あの像のモデルはキマイラって言うのか、
良く知ってるねウサ太君、
ウサ太君は、実際に、あのキマイラを見た事があるのかな?」
「そんなの、あるわけ無いじゃん、
実際に会ったら、オレなんてパクッって一口で食べられちゃうよ、
姉ちゃんに聞いたんだけど、
ホンモノのキマイラは家ぐらい大きいんだってさ、
オレたちが住んでた街の入り口にあった
魔よけの像のキマイラも、あの口からお湯出してる像と、
同じぐらいの大きさだったけどね」
「なる程、それでウサ太君はキマイラの事を知ってた訳か、
しかし、実物は家ほどの大きさだって?
確かに、そんなのとは実際に遭いたくは無いもんだね・・・」
ケンとウサ太が、そんなフラグが立つ様な会話を大浴場でしていた頃、
シュウは一人、ホテルの客室のリビング・スペースで、
魔導映写機を見続けていた。
「おお!岩田先輩(仮)の所属するチームが勝ったみたいだな、
流石だぜ!岩田先輩(仮)最後まで一点も取られなかったもんな、
それと、岩田先輩(仮)とバッテリー組んでた、
ヴァーンとかいう人のバッティングも見事だったな、
バッターボックスに入る時に、
一人だけ仮面を付けてるのは謎だったけど・・・
さて、ベスボル中継も終わったみたいだし、
次は、何を見るかな?」
シュウは、テーブルの上に置いてあったリモコンを操作して、
魔導映写機のチャンネルを変えて見る
「うん?これは、ニュースみたいな番組みたいだな、
へ~、マッスル王国って国の王様が、
浮気がバレて、嫁さん達にボコボコにされたのか・・・
こんな話題がニュースになるぐらいだから、
この世界は、割と平和な世の中みたいだな、
おっ!次は天気予報か?やっぱ魔法とか、魔導具を使って予測するのかな?」
魔導映写機の画面を見つめるシュウの瞳には、
天気予報らしき番組が始まるのが映し出された。
『ハ~イ!イイ男のミンナ、元気にしていたかな?
ゲイの為なら、男を泣かす~♪でご存じ、
シンディちゃんの天気予報のお時間よ~ん♡』
「こ、これはまた、強烈なキャラの気象予報士だな・・・」
画面を見つめるシュウの瞳には、
身長2メートル以上はあると思えるゴリマッチョが、
タンクトップにホットパンツという出で立ちで、
各地の天気を予報している姿が映し出されていた。
その顔には、『これでもか』というぐらいに化粧品が塗りたくられており、
金髪のアフロ ヘアは巨大で、バランスボールの様であった。
『明日のルクシア共和国各地は、
全般的に晴れた穏やかな所が多いけど、
海沿いの地域は、夕方から天気の急変に要注意よ~ん♡
海からの湿った空気が入り込むと、
ゴリラ・ゲイ・ウッーーーに襲われるかも知れないわよ~ん♡』
「それを言うなら『ゲリラ豪雨』だろ!」




