先輩・後輩
「うん?・・・こ、これは!?」
魔導映写機のリモコンを使って、
ピッ!ピッ!とチャンネルを切り替えていたシュウが、
一つの番組のところで、その手を止めて、
驚いた様な表情で、大きな声を上げた。
「どうしたの?シュウ兄ィ」
その、兄の只ならぬ様子を見た
弟のケンが尋ねる
「お、おう、このスポーツ中継っぽいチャンネルで、
やってる競技なんだけど、
何か、見た感じが野球っぽくねぇか?」
シュウが見つめる画面の中には、
確かに、日本の野球中継の様な競技が映し出されている
「ああ、ホントだね、
グラウンドの形といい、競技している人達の装いといい、
野球と似た感じがする競技だよね、
ラビ子ちゃん、この競技の事って何か知ってる?」
ケンが、向い合せたソファに、弟のウサ太と共に腰を下ろしている
ラビ子に尋ねる
「ああ、ベスボル中継ですね、
各国に所属チームが幾つかずつある人気スポーツですよ」
「兄ちゃんたち、オレは、
ここ、ルクシア共和国にホームグラウンドがある、
『ヨコチン・ハミデーズ』のファンなんだ!」
「へ~、そうなのか、
それで、そのベスボルとかいう競技は、
どんな風にプレイするんだ?」
「はい、シュウ様、
ベスボルは簡単に説明をしますと、
『金の玉を握って、サオを扱く』競技ですね」
「「女の子が、そんな事言っちゃいけません!」」
「は?はぁ・・・」
「うん?ちょっと待てよ・・・ラビ子、
ベスボルの事を、もう少し詳しく説明してみてくれないか?」
ラビ子の、キョトンとした表情を見たシュウが告げる
「はい、シュウ様、
ベスボルは、あの少し高くなっているマウンドという場所から、
ゴールデン・シューターと呼ばれるポジションのプレーヤーが、
金色の球に魔力を込めて投じたものを、
こちらの四角いスペースに立ったアタッカーと呼ばれる人が、
サオと呼ばれる棒に魔力を込めて打ち返すといった競技ですね、
打ち返した球が、人の居ない所に飛べばアタッカーの勝ちで、
サオに当てさせないか、球を待ち構えている仲間のところに打たせれば、
ゴールデン・シューターの勝ちとなります。」
「ふ~ん、所々は違っちゃいるけど、
やっぱ、何となく野球に似ている気がするな」
「そうだね、シュウ兄ィ」
「あっ、シュウ様、ケン様、
今から、ベスボル界のスーパースターであり、
『ザドス・ギガンテス』の絶対的エースである、
ロック・グランディアス選手がマウンドに上がりますよ」
「岩田センパイ!?」
ラビ子の声で、魔導映写機の画面へと目をやったシュウが、
画面の中で、マウンドへと上がり投球練習をしているプレーヤーを見て、
大声を上げた。
「岩田さんって、シュウ兄ィが高校1年の時に野球部に入ってた時、
甲子園を目前にして蒸発しちゃった一個上のセンパイだっけ?
でも、見た感じ、この人ってコッチの世界の人っぽいよね、
その岩田さんって、別にハーフだった訳じゃ無いんでしょ?シュウ兄ィ」
ケンが、画面に映る、
金髪で、やや茶色掛かった髪に、
緑色の瞳をしたプレーヤーを見ながら尋ねる
「あ、ああ・・・そうだよな、
岩田センパイは、普通に日本人で黒髪で黒目だったよな、
何で、この人の事を岩田センパイって思ったんだろ?」




