特割
「それで青年は、このワシに、
チェックインの手続きをして貰いたい様であるが、
それは無理であるな」
シュウに向って、
自らを、このホテルのオーナーと名乗ったブアイソーが、
そう告げる
「何でだよ?
アンタがホントに、ここのオーナーさんなら、
別に受付手続きをしちゃっても、構わないんじゃ無いのか?
オーナーのアンタに文句を言えるヤツなんて、そうそうは居ないだろ?
それと、俺の名前はシュウだから、
俺の事は、青年じゃ無く、シュウって呼んでくれや」
「相分かった。
君の事は、シュウ君と呼ばせて頂く事としよう。
それと、先程の質問に対する答えであるが、
ワシは、このホテルが創設以来、
面倒臭くて、一切の業務に携わった事が無いから、
何も出来ないのである!
また、それに伴い、居るだけで邪魔になるからと、
ワシが、ホテル内をうろついていると、
従業員からは文句が出捲りなのである!」
「偉そうに言うな!」
「ふむ、こう見えてワシは、
この業界では『金はガッポリ、ヤル気はサッパリ』として、
有名であるからな、エッヘン!」
「そこ、威張る所と違うから!
参ったな・・・早いとこチェックインしちまって、
部屋で一休みしたいとこ何だがな・・・」
「ふむ、それではカウンターの上にある、
ベルを鳴らされては如何かな?
然為れば受付係が現われる筈であるが・・・」
「それを、早く言えっちゅ~の!」
シュウは、受付カウンターの上に置かれたベルを鳴らし、
奥から出て来た本物の受付係より、
オーナーであるブアイソーの不手際を詫びられながら、
無事にチェックインを果たした。
「お帰り、シュウ兄ィ
如何したの?
何か、チェックインの手続きするのに、
やたらと時間が掛かってたみたいだけど・・・」
疲れた表情で、受付カウンターから戻って来たシュウに、
ラビ子やウサ太と共に、待合コーナーのソファに腰を下ろして待っていた、
弟のケンが尋ねる
「いや、ちょっと会話をすると、
無駄に疲れるオッサンが居てな・・・
チェックインの方は無事に済んだから、
早いとこ部屋に行って、ゆっくりする事にしようぜ」
「ふ~ん、何か良く分かんないけど、
部屋に行って、ゆっくりするのには賛成かな」
「畏まりました。シュウ様」
「うん!行こう行こう!」
シュウ達は、ホテルの案内係に荷物を運んで貰いながら、
商業ギルドが手配をした
最上階にある特別室へと向かった。
「お~っ!特別室っていうだけあって、
凄っげ~豪華な部屋だな!」
「そうだね、シュウ兄ィ
こんな部屋、日本で泊まったら、
一晩で幾ら取られるか分かったもんじゃ無いよね」
「本当に凄いです・・・世の中には、
こんな、豪華な部屋に御宿泊をされる方々が、
いらっしゃるんですね・・・」
「すごいね、姉ちゃん
この居間だけでも、ウチのお店より広そうだね」
ホテルの案内係によって通された特別室は、
2か所ある広い浴室や、
3か所に設けられた、これまた広いトイレ、
ベランダには大きなジャグジーまで兼ね備え、
バーカウンターがある30畳程の居間を中心に、
大きなベットが2つずつ置かれた寝室が6部屋もある、
超絶豪華な部屋であった。
「こんな部屋に泊まって、
支払いの方は大丈夫なの?シュウ兄ィ」
ケンが、不安そうな表情を浮かべながら、
シュウに尋ねる
「ああ、受付で聞いた話じゃ、
商業ギルドから『特別割引で頼む』との連絡が入ってるから、
一人頭で、一泊5000ギルで良いそうだぞ」
「この部屋が、一泊5000ギルで!?」
「流石はシュウ様、ケン様です。」
「兄ちゃんたちって、タダモンじゃないって感じだよね」




