無愛想
「お~!凄っげ~吹き抜けだな~」
「ホントだね、シュウ兄ィ
吹き抜けのある建物なんて、
こっちの世界に来てから初めて見たね」
「天井が、あんなに高い所にあります!」
「うわ~、あんな高いところの天井って、
どうやって建てたんだろうね?」
シュウら一行が、商業ギルドよりの優待を受けた
『ホテル・ニューコシガヤ』へと到着し、
入り口の豪華な両開きのドアを開けて、建物の中へと踏み込むと、
受付ロビーが、最上階までの高い吹き抜けになって居り、
その吹き抜けを、囲い込む様にグルリと客室が配置されているのが見て取れた。
「そんじゃ、俺がチェックインしてくるから、
ケン達は、これにでも座って待っててくれるか?」
シュウが、ケン達に、ロビーに置かれた待合用と見られる、
ソファセットを指差しながら告げる
「オッケー、シュウ兄ィ」
「シュウ様、その様な事は私が言って参ります!」
「うん、待ってるね兄ちゃん」
「ラビ子、あの受付に居るオッサンを見てみろよ、
客商売とは思えない程に、気難しい顔をしてるだろ?
あの手の手合いは、子供だと舐めた態度を取るから、
俺が行った方が良いんだよ、
ギルドからの紹介っていうのを証明する為に、
ギルドカードとかを提示する必要があるかも知れないしな・・・」
「・・・畏まりました。
ここで、ケン様と御一緒に待たせて頂きます。」
ラビ子が、不請不請という様子で頷いて見せた。
「おう!そんじゃ行ってくるわ」
シュウは、皆に、そう告げると、
受付係と見られる、無表情な初老の男性が佇む、
受付カウンターへと向けて歩いて行った。
「あ~、チェックインを頼みたいんだが・・・」
受付カウンターの前まで行ったシュウは、
何故か、こちらの方を見ようともせずに、
ずっと気難しい表情のままで、前方を見つめている男性に向かい、
そう声を掛けた。
「・・・・・。」
「無視か!
おい!何とか言えよ!」
「・・・ん?
もしかして、ワシに話し掛けて居るのかね?」
男が無表情なままで、シュウに尋ねる
「もしかしなくても、ここにはアンタと俺しか居ないだろが!」
「うむ・・・そうか、
お主の顔付きからして、
架空の人物との会話を楽しんでいるのかと認識したのだが、
どうやら、こちらの勘違いであった様だな・・・」
シュウに応対をする男は、
相変わらず無表情のままで、そう言った。
「それって、どんな顔付きやねん!」
「・・・で、要件は何かね?」
「え?あ、ああ、
チェックインの手続きを頼むわ」
「それを、ワシにしろと?」
「そりゃそうだろ・・・
オッサンは、その為にココに突っ立ってんだろうが」
「ふむ、それは違うぞ青年、
ワシは、ここで日課の瞑想に耽って居ったのだよ」
「えっ!? オッサン、あんた
このホテルの受付係じゃ無いのか?」
「如何にも!
ここに居るワシは、受付係では無く、
当ホテルのオーナーである『ブアイソー』と申す者である!」
「『名は体を表す』とは、良く言ったものだな・・・」




