デザイナーズ・ホテル
「今日、泊まる予定の宿・・・確か、商業ギルドの人が
『ホテル・ニューコシガヤ』とか言ってたと思うんだが、
どっちに行けば良いんだろうな?」
ミケルンへの未練を断ち切り、
気持ちを切り替えて宿探しをすると宣言したシュウが、
ケンに、そう言った。
「うん、ちょっと街の人に聞いてみようか?」
「あっ、それでしたら私が聞いてきますね」
ラビ子が、シュウらに告げると、
足早に、近くを歩いていた街の住人と見える人に聞きに行く、
何言かの会話を遣り取りしてから、
再び足早に、ラビ子が戻って来た。
「ラビ子、宿の場所は聞けたか?」
「ありがとうね、ラビ子ちゃん」
「はい、教えて頂けました。
先程、シュウ様が仰っていた宿は、
この街でも、指折りな高級宿泊施設らしくて、
宿の名前を告げただけで、直ぐに場所を教えて頂けました。」
「お~!それは、出来したぞラビ子、
そんじゃ、早速だが皆で向かうとしようぜ!」
「うん、そうだねシュウ兄ィ」
「はい、ご案内をしますね」
ラビ子の先導で一行が今夜、宿泊する宿へと向い暫く進むと、
一行が歩を進めている方向に、巨大な建築物が見えて来た。
「もしかして『ホテル・ニューコシガヤ』ってアレか?」
シュウが、先導をするラビ子に尋ねる
「はい、先程の方に聞いた通りだと、
あの場所で間違いが無いと思います。」
「うわ~、この街で指折りの宿ってだけあって、
大きくて立派な建物だね」
「ぼくも、あんな大きな家見たの初めてだ・・・」
ケンと、ウサ太が段々と近づいて来た巨大な建物を見て、
驚きの表情を浮かべながら言った。
「見た感じ、地上5階建てぐらいかな?
3階建以上の建物なんてのは、こっちに来てから初めて見たな」
「そうだね、シュウ兄ィ
ただ単純に建物の大きさだけじゃ無くて、
デザイン的にも凝った造りに見えるよね」
シュウとケンが、こちらの世界に来てから見た建物らは、
単純に石積みか、木造の建物ばかりであったのだが、
近付くに従いハッキリと見えて来た宿の外壁は、
色違いの石を組み合わせて、
絶妙なモザイク柄を浮き上がらせていたのであった・・・
「ああ、地味な発色の石ばかりを組み合わせてるから、
決して、目を引く様な派手さは無いけど、
却って、それが、宿泊施設にピッタリな、
シックな雰囲気を醸し出してて、
センスの良さを感じさせるよな」
「うん、それに、上の階に行くに従って、
段々、石の色を薄くしてってるのも良い感じだよね」
「流石は、お二人とも建築関係のプロだけあって、
私達とは違った見方をされますね」
「うん、ぼくもタダ『大きいな~』としか思わなかった。」
「おっ、あそこの、
建物の真ん中にある所がメインの入り口みたいだな、
早く、中に入ってチェックインしようぜ」
「オッケー、シュウ兄ィ」
「畏まりました。」
「うん、行こう行こう!」




