見た目じゃ分からない価値
「勿論、知ってますよ!
『パヒューム・トレント』と言えば、幻の香材と呼ばれてて、
丁寧に乾燥させた物を、僅かに削り取って火を点け、
その香りを楽しむという作法が、
他国の貴族の方々や、我が国の裕福な方々の間で、
根強い人気がありますから!」
パヒューム・トレントに対して聞かれたミケルンが、
その思いを熱く語った。
「へ~、日本で言うところの『香道』みたいなものか、
じゃあ、その香材になるなら、割と価値がある物なんですね」
「日本でも『伽羅』とかの良いヤツなんかが、
凄く高い値段で売られてたもんね」
ミケルンの言葉を聞いたシュウとケンが、
感心した様な表情で、そう告げる
「価値があるなんてモンじゃ無いですよ!
私が前に首都のポルポートで見た物なんか、
5センチぐらいの大きさで500万ギルの値段が付いてましたよ!」
反応の薄い2人に憤慨した様子のミケルンが、
その価値を詳細に説明をする
「5センチで500万!?
そりゃ、確かに凄い金額だな!」
「それだけ、希少価値があるって事なんだろうね」
「5センチで、その価格なら、シュウ様方が造られた
この立像の価値は一体・・・」
「兄ちゃん達って、スゴイ材料使ってるんだな!」
その金額を聞いたシュウらが、流石に驚きの声を上げた。
「乾燥させるのに特殊な加工が必要な様ですが、
それにしても、これだけの大きさの像となれば、
もの凄い値段になると思いますよ、
そんな貴重なお品を気軽に頂くという訳には・・・」
「見た目は、普通のトレント材と余り変わらないんだから、
知らん顔して店に飾っててくれれば良いですよ、
誰かに、何か良い匂いがしないかって聞かれたら、
像に付与された魔法の効果だとでも言っときゃ良いと思いますよ」
「そうそう、お店に来た人も、
まさか、そんな貴重な材料で造った像が、
普通に飾られてるとは思わないだろうし・・・」
「そうは、仰いましても・・・」
「もう、この像はミケルンさんをモデルにして造っちゃったんだし、
自分の像が他人の手にあるのも、何か嫌じゃ無いですか?」
「そうですよ、シュウ兄ィなんかに渡したら、
何に使われるか分かったモンじゃ無いですよ」
「フフフッ、分かりました。
この像は、ありがたく頂いて、お店に飾らせて頂きますね」
「ええ、是非そうして下さい!」
「その方が、シュウ兄ィも喜びますよ」
ミケルンに木像を無事受け取って貰い、
購入する商品の会計を全部済ませたシュウら一行は、
いつの日かの再会を誓いつつも、
思いっきり後ろ髪を引かれる様子のシュウを、
ズルズルと皆で引きずりながら店を後にした。
「ううっ・・・ミケルンさん・・・」
「シュウ兄ィ、いつまでも未練がましくしていると、
女々しいって、ミケルンさんに嫌われるよ」
「さぁ皆!次は今夜泊まる予定の、宿に向かうぞ!」
「切り替え早っ!?」
「流石、シュウ様です。」
「シュウ兄ちゃんを見てると面白いな~」




