思い
「あんた、いつまでも下らない話をしてないで、
早く、サンゾさん達の所に向かいなさいよ、
余りにも待たせたら悪いでしょ?」
ミケルンが、いつまでもシュウとやりあっているゴクワに告げる
「おっ、そうだった。
忙しい、売れっ子C級冒険者の俺は、
こんなヤツと無駄話をしている場合じゃ無かったな、
そんじゃ俺は、もう行くからよ、また暇があったら顔出すぜ、
それから、オイ!お前、シュウとか言ったな?
いつまでも、ミケルンの商売の邪魔をしてないで、早く帰れよ」
「ええ、サンゾさん達に、
私が宜しく言ってたって伝えてね」
「ゴクワ、お前は、もう来なくって良いからな、
俺は、これからミケルンさんとの愛を育む語らいで忙しいから、
お前の、相手をしてる暇が無ぇんだわ・・・」
「何だと!?この『早く行きなさ~い!!』ちっ、うっせ~な、
分かったよ、俺は行くよ、じゃ~な!」
ゴクワは、尚もシュウに文句を言いたい様子であったが、
ミケルンに一括されて、ブツブツと文句を言いながらも、
冒険者パーティーの仲間が待つ場所へと向かった。
「ふぅ~、ホント世話が焼けるんだから・・・」
「矢鱈と喧嘩っ早いけど、面白い幼馴染ですね」
「キャラが濃い人だったね」
「もぅ、イジって面白いのは分かりますけど、
シュウさんも、余りアイツの事を、からかわないで下さいね」
「ハハハ、ホントすいません、
久し振りに、イジり甲斐があるヤツが現われたんで、
ちょっと、悪乗りしちゃいました。」
「恋のライバルじゃ無ければ、
ゴクワさんって、シュウ兄ィの好きなタイプのキャラだよね」
「ゴクワは、昔っから何かというと、
私の事を、保護しようとする様な行動をするんですけど、
私としたら、良いとこ手間の掛かる弟って所なんですよね」
「あいつは何で、そんなに、
ミケルンさんの事を保護しようって思ってるんですか?」
「そりゃ、ミケルンさんの事が好きだからじゃ無いの?」
「ええ、それはですね、
元々、私とゴクワは同じ獣人の村で生まれ育ったんですけど、
当時、私の両親と、ゴクワの御両親は共に冒険者をしていまして、
同じパーティーに所属していたんですよ、
他にも何人か同じ様な境遇の子供たちが居ましたので、
そういう子供たちは一か所に集められて、
村の託児所の様な施設で皆、兄弟の様に育てられていました。
そんな、ある日の事ですけど、
魔獣を討伐するクエストを受けていた両親らのパーティーが、
逆に魔獣の奇襲を受けまして、
仲間を守ろうとした父が、命を落としてしまったんです。
父の死に、大きなショックを受けた母は冒険者を引退して、
それまで溜めていたお金を使って、この店を建てた訳なんですが、
どうやらゴクワは、御両親を助けて命を落とした
私の父の代わりに、私を守ろうと考えているみたいですね」
「なる程な・・・アイツに取ってのミケルンさんは、
ただ単に、好きな女性ってだけじゃ無くて、
自分の身を挺しても守るべき、家族みたいな認識もある訳か・・・」
「僕らが思ってたよりも、ずっと、
ゴクワさんは、ミケルンさんの事を大事に考えてるみたいだね」




