ロボコック
洗面所や浴室を一通り見て周ったシュウとケンは、
一応、便所も見て置く事にする
「う~む、やはり当時のままで和式便座だったか、
まあ、昔と違ってるのはボットン便所じゃ無くて、
排泄物は謎空間に廃棄されるみたいだから、
匂いなんかは大した事が無さそうだがな・・・」
「シュウ兄ィも建築現場の仮設トイレで慣れてるから和便で平気でしょ?」
「ああ、和便を使う分には問題無いんだが、
自宅のトイレに洗浄便座を付けてからは、
何か温水で洗わないとスッキリしなくなってしまってな」
「あ~、確かにね、ウチも洗浄便座を使い始めたんだけど、
外国の人が日本を旅行なんかで訪れた時に、
使い心地を褒め称えるのが良く分かるよね」
「だろ!?こっちの世界に無いなら、
そういう魔導具を造ったら爆発的なヒットになるんじゃねぇかな?
持ち運びが出来る携帯お尻洗浄魔導具として売り出すんだよ!」
「でも、そういうのって直ぐに真似されちゃうんじゃないのかな?」
「そういう場合は、他社には無い性能を謳い文句にすれば良いのさ、
例えば、『ウチの携帯お尻洗浄魔導具は水流ハブラシとしても使えます!』とかな」
「僕が客だったら、その両方の機能が付いた魔導具は買わないと思うな」
「そうかな~、名案だと思ったんだがな~」
「どちらかと言えば、『迷案』の方だと思うよ」
シュウ達は、そんなバカバカしい会話を交わしながら居室部分へと移動する
「やっぱり部屋の方も、壁周りにスイッチやコンセントが付いて無いのを除けば、
当時と変わらない様だな」
「居室部分も廊下なんかと同じで照明器具が付いて無いんだね」
「ああ、天井や壁自体が光を放っているんだな」
一応、部屋の押し入れや天袋なども覗き込んで、
変わった所が無いかを確認した2人は、続いて台所へと移動をした。
「部屋の押し入れに綿布団が入っていたのは嬉しいな、
これで、畳の上で落ち着いて寝られるぜ」
「僕は羽布団やベットでも寝られるけど、
シュウ兄ィは、綿布団派だもんね」
「ああ、どうもアノ羽布団のフワフワした感じが好きに成れないんだよな」
「父さんや母さんは、軽くて良いって言って羽布団を使ってるけどね」
「親父は頑固な割には新しい物好きだからな」
「あ~、確かに、そんなとこ有るよね」
「おっ!ちゃんと台所に冷蔵庫もあるな」
「昔のタイプだから、冷凍室と冷蔵室だけなんだね」
「ああ、それでも食品を低温で保存出来るのはデカいぞ、
こっちの世界には、どんな病原菌が居るのか分からないからな」
「そうか、こっちの人達には耐性があっても、
異世界から来た僕達には無いかも知れないからね」
「まあ、俺達の能力に『状態異常無効』が付いてたから大丈夫だとは思うが、
用心するに越した事は無いからな」
「うん、そうだね」
「冷蔵庫もコードが付いて無いし、コンロのホースも無いから、
台所製品も、みんな俺達の魔力で働いてるんだな」
「これだけ、色んな物に魔力を使ってるのに吸われてる感じがしないんだね」
「ああ、普通の人なら魔力切れで、ぶっ倒れてるとこなんだろうけど、
俺達の場合は、異世界から来たチート補正が働いてるから平気なんだろうな、
こっちの魔導具屋さんから見たら、これだけ魔力の消費量が少ない魔導具なんて、
値段が付けられない程の価値があるんだと思うぞ」
「ふ~ん、じゃあ、なるべく知られない方が良さそうだね」
「ああ、教えるにしても、
俺達が信用出来る人に限定しなきゃダメだな」
「分かったよ、シュウ兄ィ」
「良し!じゃあ台所は、こんなもんで良いだろ、
次は居間を見てみようぜ」
「うん」
2人が居間に移動して見ると、驚いた事に、
そこにはソファセットの他に、ゴロッとしたブラウン管テレビの様な物や、
昔のタイプの様に大きなステレオ・セットが置かれていたのだ
「テレビがあったって放送してるテレビ局が無いだろうに」
シュウが、テレビ本体の音量調整と一体になった電源スイッチを引っ張ると、
お馴染みの、赤・青・黄などの色が縦長に並んだ映像が映し出されたので、
一応、チャンネルのツマミを指で摘まんでガチャガチャと捻り廻してみる事にした。
「うん?」
1チャンネルだけ映像が映し出されていたので、
シュウはチャンネルのツマミを捻る手を止めた。
「シュウ兄ィ、何か夜中に流れてるみたいな映像だね」
「ああ、ヒーリングとかいうのに似てるな」
その映像は、美しい海や山、森林などが順番に映し出されて居り、
音声は、心が落ち着きそうな静かな音楽が流れていた。
「画面の右下に『神チャンネル』って映像が出てるね」
「ああ、多分、神様が俺達に連絡取りたい時とかに使うんだろ」
「じゃあ、このテレビは、その為にしか使えないのかな?」
「そうとは限らんぞ、テレビの置台の下の方を見てみろよ、
ビデオらしき物が置いてあるだろ、その横にはテープらしいのも有るから、
何かしら録画してあるんじゃないか」
「あっ!ホントだ」
ケンは、テレビが乗っている台の前面にある、
小さなガラスが嵌め込まれた扉を開けると、
ビデオテープらしきものを手に取って、そのラベルを見てみた。
「どうだ?何か録画してありそうか?」
「うん、ラベルには『ターミ姉ちゃん』とか『ランボー者』とか書いてあるね」
「何か、昔のエロビデオみたいなタイトルだな」




