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異世界ブラザーズ  作者: シュウさん
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プロローグ

その男の名前は井堺いさかい 秀太しゅうた、アラサーのナイスガイである、

彼は現在、金曜日の朝6時半という時間を、

弟の憲太けんたが運転するトラックで仕事場へと向かっている、

ここで彼、秀太に関する情報を少し説明して置こう、

井堺 秀太は、大工の名人である父親の圭太けいたと、

専業主婦で母親のナオの間に長男として生まれた。


幼い頃より好奇心が旺盛おうせいで、

次々と色んなスポーツや趣味に手を出しては、直ぐに非凡な才能を見せて、

近所では神童として持てはやされていた。


しかし、彼にはゆいいつ一にして最大と言っても良い悪いくせがあった

それは、何事に対してもやすいという点だ

彼は何かを始めると、いつも直ぐに周りの者達が目を見張る様な上達を見せて、

競技では、いくらもしない内に上位へと顔を出すのだが、

1位を取る事は無く、3位ぐらいになると止めてしまうのであった。


一度、父親の圭太が「何故、最後までやりげないのか?」と、

本人に尋ねた事があったのだが、

秀太 いわく「1位に成れないのが分かったから」との事であった。


秀太は、その才能ゆえに、

何をするにしても、ある程度をこなした段階で自分の限界が見えてしまうのであった

圭太は息子に「1位に成るだけが大事な事では無いんじゃないのか?」と教えをいたが、

秀太はよわい5歳にして「楽しみは、一つの事をきわめた後で良い」と、

返答を返したとの逸話いつわが残っている


そんな秀太は、小学生にして近隣に鳴り響く天才として認知され、

中学生時代は、最強の助っ人として、帰宅部にも関わらず連日部活動で忙しい日々を送った。


地元の私立高校へと進学した秀太は、

そこで初めて部活動へと正式に参加する事となる、と言っても、

自ら積極的に入部した訳では無く、

当時付き合っていた彼女が野球部のマネージャーになるから、

一緒に入部しようと誘われての事であった。


秀太が入学した高校は、県内でも有数の高校野球の名門校であり、

過去数回に渡り甲子園の出場と、上位の入賞を記録していたが、

ここでも秀太は、その才能を如何無いかんなく発揮して、

今まで野球といえば、小学生時代に近所の友達との草野球や、

中学生時代に偶に野球部の助っ人で呼ばれる程度だったのにもかかわらず、

1年にして5番サードのレギュラーポジションを獲得かくとくしていた。


そうして迎えた夏の県大会の決勝戦、

秀太の高校は甲子園出場の大本命であったにも関わらず、

エースで4番の先輩が突然失踪するというアクシデントに見舞われて、

8対9のスコアで、惜しくも準優勝という結果に終わった。


秀太は、その試合3打席連続ホームランの6打点との活躍にも関わらず

次の日、野球部の部長先生に退部届を提出して野球部を辞めてしまった

当然、野球部の監督を始めとして、多くの人々が秀太に思い留まる様に説得したが、

彼は「他の人の影響で勝ち負けが決まる事では無くて、

自分の力のみで結果が出る事がしたくなった。」と言い、

退部の意思を撤回する事が無かったそうだ

当然、野球部のマネージャーをしていた彼女からも強く引き留められたが、

秀太はがんとしてゆずらず、その彼女との仲は終わりとなった。


秀太を語るに付き、彼女との関係が長続きしない事も特徴の一つと言える、

その才能から、どの様な集団に属しても直ぐに頭角を現すので、

女性から言い寄られるケースが多い秀太であったが、

彼女が出来ても半年と続く事が無かった

実際にアラサーを迎えた現在も独身であり、

あれだけモテるのに、何故結婚しないのかを不思議に思った友人が尋ねた事があったが、

その時の秀太の答えは「俺は自分大好き人間だから、

嫁や子供に使う時間があったら、自分の為に使いたいからだ」と答えたという

その友人が「お前らしい生き方だが、そんな生き方は寂しいんじゃ無いのか?」と聞いたが、

秀太は「俺には、この生き方が合っているし、家庭という物に魅力を見い出せないんだよ、

でも、家庭を否定する訳じゃ無いんだぜ、

実際に弟の憲太はシッカリとした家庭を持って幸せに暮らしているしな」と返した。


秀太の3歳年下の弟、

憲太は、兄とは全く違った人生を送っており、

小学生時代に、例のごとく秀太が気紛きまぐれに始めた剣道を一緒に初めて、

秀太が、サッサと辞めてしまった後も、もくもく々と修行を重ねて、

高校3年の時には、全国大会にて個人優勝、団体戦でも3位の偉業を成し遂げた。

周囲の人間は学校関係者も含めて、大学に推薦入学で入り剣道を続けるものと考えていたが、

高校を卒業すると同時に、大工の父に弟子入りして、

幼馴染のマリモとの結婚を果たし、今では2児の父親であった。


一方、4年制の大学に進学して大学院にまで行った秀太であったが、

そこでも、本気でやりたい事を見つけ出す事が出来ずに、

大学院卒業後は、特別に就きたい職業も無いので、

取り敢えずは、父親が経営する工務店に、

弟憲太に遅ればせながら入る事となった。


秀太が工務店に入社してから早1年、

率先して始めた大工仕事では無いものの、

持ち前の才能から腕前はメキメキ上達して、

コツコツと作業をこなす努力家の弟と共に、

名人である父親から、2人で現場を任されるぐらいには上達していた。


兄弟に大きな異変が起きたその日も、

2人は、いつもの様に憲太が運転するトラックで、

建築現場へと向かう途中であった。

「シュウ兄ィ、今日は早めに現場を上がりたいんだけど、

良いかな?」


「ああ、別に構わないけど何か用事があるのか?」


「今日は、朱莉あかりの誕生日なんだよ」

朱莉というのは、憲太の長女の名前である


「ああ、朱莉ちゃんの誕生パーティーがあるのか、

朱莉ちゃんいくつになるんだっけ?」


「今日の誕生日で7歳だよ」


「朱莉ちゃんも、もう7歳か、

そうすると、弟のれんは3歳だな」


「うん、そうだよ」


「憲太の子供が7歳になるんだから、俺達も年を取る訳だな・・・」

家庭を持たない所為か、

年齢よりは、ずっと若く見られる秀太であったが、

最近、髪の生え際が気になり始めていた。


「兄ちゃん、言い方がジジむさいよ」


「ほっとけ!

それよりも、この辺は道幅が狭くて路地も多いんだから、

飛出しには注意しろよ」


「了解、了解。」


「ホントに分かってんのか?って言ってるそばからホラ!」


「うわっ!?ヤバっ!」

道路脇の路地から突然、人では無くネコが飛び出して来たのだ


フロントガラスに映るネコの姿が大きくなって来るわずかな時間、

3度のメシと同じ程度には、ネコ好きの秀太は、

思わず心の中で願いの叫び声を上げた。

(ネコ好きの俺の乗った車が、ネコちゃんをくなんて絶えられん!

誰か、あのネコちゃんを救ってくれ!)


『良かろう』

その時、秀太の頭の中で、誰かがそう言った様な気がして、

2人が乗ったトラックが白い光に包まれ始める、

ラノベが好きな秀太は今後の展開に想像が付く様な気がしつつ、

段々と薄れ行く意識の中で、

『どうせなら、ネコちゃんの方を安全な場所に飛ばしてくれよ・・・』と考えていた。

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