第2話 「出産」
更新遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
次回更新は次週日曜日にしたいと思っています。
ーアイズ視点ー
今日は主であるシルフィの出産の日である。
シルフィの隣では夫であるグレンが不安そうにシルフィの手を掴んでいた。
そんな顔ではむしろ不安にさせてしまうだけだというのに。
『では、始めるとしましょう。シルフィエール・ヴァイスハーゼ、そなたはその身に宿した子を永久に愛しこの世界の誕生を望むか?』
白いヴェールと不可思議な羽衣を身に纏う女性がシルフィに問う。
シルフィとグレン、そして私とクリスの主神である。
「もち・・ろん望むわ」
額に汗を浮かべ、膨らんだおなかをさする。
『アイズ、シルフィエールに回復魔法と支援魔法をかけなさい』
「はい、仰せのままに」
私を見ることなくそう告げる主神に即座に答え、魔力を練る。
「聖母の加護の元に癒しを与えたまえ《キュア》
彼の者に注ぐ癒しの光よ降り注げ《クーア》」
唱えると同時にシルフィに光が降り注ぎ、次第に顔が和らいでいく。
《キュア》で癒したとともに《クーア》で持続的体力の回復と痛みを軽減したのだ。
『シルフィエール、今からあなたの子を取り出します。』
瞬く間にシルフィの子は生まれた。
主神自らの手による出産を見るのはこれで二度目だ。
当たり前のように苦しむことなく母子を引き合わせる結果を導く。
『それでは、神界に戻ることにしましょう』
神界と呼ばれる神の世界。
神界につながる扉がどこかに存在しているという話だが、そこに到達したものはいまだに存在しない。
『また後日、彼には刻印を授けましょう』
そう告げ、消えていく。
消えるとほぼ同時に子供が目を覚ました。
揺り籠に寝かせていたクリスもいつの間にか起きていたので抱きかかえることにした。
「ふふっ・・目元なんかグレンにそっくりね」
いとおしそうに赤子を撫でる。
グレンの血を多く引いたのか、人間種特有の丸い耳と肌の色が薄橙色だ。
三種族の血を引くにしてはどうにも謙虚なものであるが特に珍しいものではない。
ちなみにシルフィは森精種、グレンが人間種と獣人種のハーフだ。
グレンは人間種の血を強く引いているが狼人のような力強さを持っている。
「あなたは今日からレイフィールよ」
シルフィが子供をーーレイフィールを撫で、グレンが安心したように見ていた。
次第にグレンもレイを抱きたくなったのかシルフィに手を伸ばしていた。
「ありがとう・・・ありがとう。」
涙をこぼしてグレンは感謝を口にした。
よくやったでも、ご苦労様と労いの言葉でもなく感謝の言葉を述べた。
レイを抱きかかえ、何度も頬ずりをしていたグレンだが、自分のひげのせいで例が痛そうにしているのに気づかない。
「ふふっ・・グレン、そんなことをしていては子供に嫌われちゃうわよ」
シルフィにそういわれ始めて自分の髭で子供を傷つけてしまっていたのに築いたのかシュンとしてしまうグレン。
そんな光景についクリスを抱きしめる力を強くしてしまう。
だが、遠くで見ていた私は気づいてしまった。
生まれたばかりであるはずのレイは言葉を理解しているかのように的確な反応をしていたことに。
そして、まるでこちらを観察するかのようにこちらを見ていたことに。