第六話 決戦の時は来たり
タイトル捻ろうとして何も良い案でませんでした(半ギレ
「決戦はいよいよ明日……これで健全な未来へと一歩近づくわ……」
ノートパソコンでとあるオンゲのサイトを開いて近々行われると書いてある大会の概要を開きながら。大きなベッドに横たわる少女は満足そうに足をバタバタさせていた。
そしてPCを閉じ、横の机へと片付け布団をかぶる。
「私が負けるはず無いもの……見ていてくださいね、三日月姉さま……」
私が作る綺麗な世界を――――少女はそう願って眠りについた
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そして時はきた。俺とユキ姉は舞台の裏手に立っていた。今から開会式のあと参加者はフィールドへ移動させられる。
「やぁぁぁあああああああって参りました! 実に11ヶ月ぶりとなる公式大会『最終決定戦杯』と銘打たれた今大会。実況は私、FFOの広報担当『巻島』でお送りしていきますッ!!」
公式大会ということでいつものフォートシティではなく宇宙船『フォート・セラフィム:08』へと大勢の人が集まっていた。セラフィムは公式での催し物がある時に限定開放される区画で、雰囲気ぶち壊して言えばただの『イベント広場』である。
「この放送はニ○生、ゲームちゃんねる、FFO公式サイト等で生中継中だ! そっちの皆も見えてるかーい! それではこのゲームの未来を担う奴らの紹介と行こう!」
向かい側から出てきた二人組がおっさんの立つ壇上まで来て。三人が虚空に向かって手を振っていた。多分そっちにカメラがあるんだろう。
そこでようやくユキ姉が静かだなと思って隣を見ると、緊張しているのか若干目が泳いでいた。
「……姉さん?」
「ひゃいっ!?」
肩を叩くとビクンッと身体が跳ね上がった。そこまで緊張してるのか……
「姉さん仮にも元生徒会長でしょ……大勢の前に立つなんて慣れてるんじゃないの?」
「そ、そうじゃなくて……いやそれもそうなんだけど……」
と恥ずかしそうにしてから少しだけ俯いて、
「……もしこれで負けちゃったらこの世界も本当に無くなっちゃうのかなと思うと……少しだけ怖くて……」
ユキ姉はその場に座り込んでしまった。
「……姉さんはいつもそうやって無駄に一人で抱え込む」
「無駄っ!?」
ガーンとショックを受ける姉さんに向かって手を差し出す。
「姉さんが悪いわけでもなし、俺ら以外にもいっぱいいるんだから。俺らが負けても後の人に任せときゃいいんだよ」
『姉さんが気にすることじゃない』と念押ししユキ姉の手を強引につかんで優しく引っ張るとユキ姉はすくっと立ち上がってくれた。
「うん……ありがとねゆうくん。ほんとゆうくんの世話になりっぱなしだね」
「…………ゲームん中じゃ俺のほうが先輩だしな」
「そうだね結城先輩っ♪」
「やめてくれそれ……」
そんなコントをしていると舞台の方から『さぁ! それではいよいよゲームの未来を預ける事になった傭兵たち、最後の一組の紹介です!』と声が聞こえてきた。
『もう大丈夫?』とユキ姉に確認する。この俺らの紹介が終わったらもう次は戦場だ。
「うん、もう大丈夫」
「それはよかった……じゃ、行こうか」
そして俺達は舞台へと歩き出した。ロビーは宇宙船のような(宇宙船だが)銀の壁や床。奥にはガラスのような透明部分から宇宙の黒さと地球の表面が見えていた。
中央まで歩き、集まっている人のところへ身体を向ける。ユキ姉には励ますためにあんなことを言ったがやはり大勢の前に立つっていうのは緊張する。
(ユキ姉は……っていつもの顔だ……)
ユキ姉の方をちらっと覗くといつもの笑顔で前だけを見つめていた。たまに壇上で見るいつものユキ姉の表情だった。
「チーム『VV《ダブルピース》』『シナロ』『天《ソラ》』の二人です!!」
そこからのことはあんまり覚えてない。インタビューでも冗談を交えながらハキハキ喋ってニッコリと微笑むユキ姉とそれに湧く男どもぐらいだ。気づいたらビルの中にいた。
「……ようやく落ち着いた」
「ゆうくんかみっかみだったね。大丈夫?」
「ごめんあんまり思い出させないで」
超と書いてスーパーと読むほどの優等生だったユキ姉と違って引き篭もりニートゲーマーだった俺は壇上で皆の立つなんて経験ない。だからかみまくったり日本語間違えたりしても問題ないんだ。
そんな感じで震えているとどこからかさっきの司会の声が聞こえてきた。一瞬さっきの記憶が蘇りかけたが、必死に払いのけ耳を傾ける。
『さて、全チームの配置が終了したところで、ここでルールのおさらいといこう!』
ビルの暗闇の中で隣のユキ姉と向き合い無言で頷く。
『この大会最大の問題『ゲームサービスの終了』を避けるためにはこのフィールドのどこかに紛れているチーム『月夜』を倒すことが必要になります。けれどチーム月夜には後日配信予定の新フレーム『N.W.f GUREN』と『NWC-Tempest Mk-0』と強力な新機体を揃えており初心者といえど一筋縄ではいきません!』
端末に表示された真紅のミドルフレームとトゲトゲとした外装の二機の映像を見て舌打ちする。紅蓮とテンペスト……紅蓮は恐らく以前環境で猛威を振るった、簡単に言って『ぶっ壊れ』だったミドルフレーム『N.W.f KURENAI』の後継機だろう。テンペストもミドルフレームの中では格段に使いやすく、見た目のかっこよさ故に愛用者も多い。
「下手なライトを凌ぐ速度持ってた『紅』の進化系と。ミドルのくせにいい意味でバランスの良い強機体揃いでハズレがないって言われるテンペストシリーズの新機体……しかも先行実装兼ねてるって嫌な予感しかしねぇ」」
そんな心配を他所に司会は意気揚々と『さて! ではそろそろカウントダウンへと入りたいと思います!!』と実況を続けていた。
「気が抜けないね」
ユキ姉はそう笑って頭部の暗視ゴーグルの稼働をチェックしていた。さっきまで緊張でヘタれこんでいた人と同一人物とは思えない変わりようだ。
カウントダウンは二桁を切っていた。
「さて……時間だよ『ソラ』」
「うん、『シナ』」
3……2……二人の間にピリピリとした空気が張り詰め、司会の声以外の音が完全に消え去った。
……1……
『ゼロォ!』
俺らの『戦争』は始まった。
ついに毎日更新週刊終わり! ……ですがこのシリーズはまだ続きます! というかこれからです! と、言うわけで更新ペースは落ちますが早めに投稿していくつもりなのでこれからもオナシャス!
誤字脱字、感想など待ってます! レビューでもいいんだからね!(叶わぬ願い