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フレームフロンティアオンライン[Frame Frontier Online]  作者: 長月シイタ
フレームフロンティアオンライン
6/11

第四話 嵐は去って

フィールド『旧市街地』巨大なビルが乱立する荒れ果てたコンクリートジャングル。ビルが挟む大きな車道に二人は立ちすくんでいた。


「遠い……」


 相手の位置と平行に走り続けながら両手に持った二丁のVz_61(スコーピオン)でバラララッと銃弾をバラ撒く。相手はサブアームのシールド二枚を動かしある程度防ぎながらこちらに少しずつ寄ってくる。少しスラスターの出力を上げ距離を取ってリロードしようとすると、その隙を見逃さずに一気にスラスターを吹かして突撃してきた。

 そのままスラスターをふかし続け距離を維持しつつ牽制目的で使っていたスコーピオン二丁をハンガーのSCAR-Lに切り替え両手で構えてしっかりと狙うが、シールドと装甲に守られまともなダメージが入らない。そうこうしているうちにこっちが先に起動したスラスターが切れ距離が詰まってしまった。


「遠い……!」


 シールドの中からMP7の銃口が覗き、火を噴いた。右手のシールドブレードで防ぐが、相手が右腕でチャージしていた電磁ナックルに気付かずそのままモロに食らってしまって一瞬動きが止まる。止まった瞬間に両肩の砲口がこちらに向き――――HPバーが吹き飛んだ。


「遠い……っ」








あの子(ゆうくん)が遠いよ……っ」





――――――


――――


――






「えぇ!? お姉ちゃんと出ることになったの!? ていうかゲーム存続を賭けた大会ってどういうこと!?」


場所は現実に戻って夕食のリビングにて。妹の憂喜が驚いて声を張り上げていた。いつもなら母さんから怒られそうだが今日は生憎と用事でいない。ついでに言うと夕食も憂喜が作ったものだった。


「なんか運営がそう言ってたんだよ……」

「マジなのそれ……荒らしに構ってゲーム終了の危機って運営バカなの?」

「つっても相手初心者っぽかったぞ? さすがに負けはねぇだろ」

「ふーん……あ、それか最初っから運営の仕込みかもね」


 憂喜は冷静にそう言うと夕飯のハンバーグを口に運んだ。確かに、話を聞いただけならあそこの騒動自体が運営の打った一芝居って線もなくはないだろう。むしろソッチの方があり得る。

 ただあの場にいた奴は全員わかると思う。アイツは本物だ。


「というかお姉ちゃんは?」

「ちょっと修行してくるってさ。まだあの人ランク37だし……」


まぁ修行どうこうでランクを50まで上げるのはキツいだろうが……行って40くらいだろう。


「今からでも私に変えない?」

「無理」

「ちぇー先に私のほうが誘われたのにー」

 

 そもそも運営に誘われたのはユキ姉の方なのだから、ユキ姉を外すわけにはいかない。

 それに――――


「ユキ姉、本気でやりたがってるみたいだったから」

「……そうなの」


 憂喜はそういいながら食べ終わった茶碗を置いて小さく微笑んだ。


「けど私だって本当にやりたかったしーっ!」

「はいはい。また今度な」


『約束だからね?』と憂喜は言って自分の食器を片付けに台所へと向かった。途中で思い出したのかふと立ち止まって話しかけてきた。


「あ、そうだ! ゆう兄、お姉ちゃんにご飯持っていってあげてくれない? 早くしないと冷めちゃうし」

「へいへーい」






――――――


――――


――





「姉さーん? 夕飯持ってきたけどもう起きてるー?」


ユキ姉の扉をノックしてみるが反応はない。『入るよ』と言いながら開けてみるとヘルメット型ギアを外してベッドですうすうと寝息を立てているユキ姉がいた。


「……遅すぎると思ったら寝てたのか」


 長い黒髪に白いワンピース。姫の二つ名に恥じない綺麗な寝顔。身長も高くてスタイルもよく女子からの声援も熱い。これで性格もお人好しが過ぎるっていうんだからまさに非の打ち所がないと言うに相応しい。だがこうしてゲームに疲れそのまま寝ている、なんて無防備な姿を知っているのは俺だけなんだなと思うと胸の奥にこみ上げてくるものが――――


「んなもんねぇよ……」


 夕食のトレーを机の上に置き、寝ているユキ姉を揺する。


「おーい姉さん。夕食冷めちまうよ」

「んぅ…………ご飯……?」


 声をかけながら揺すっていると。ようやく眠り姫が目を覚ました。


「疲れて寝るほどやってたのか?」

「うん……ちょっとシミュレーション使ってね……『結果は?』…………」


 うん。むしろ37程度のステータスで50用で設定されている対人用シミュレーションに勝つのは熟練者でも難しいだろう。


「……実際に身体動かしてるわけじゃないから肉体的な疲れはないにしろ、普通にゲームやってるわけじゃないんだから普通に脳は疲れるんだから。無理しないでよ」

「……ありがとね……」


それじゃあと部屋から出ようとすると『ねぇゆうくん……』とユキ姉から呼び止められた。


「なに、姉さん?」

「ゆうくんの強さの秘訣って……なに……?」


 姉さんはそう聞いてきた。正直に言えばそんなもの考えたこともないから知らない――けど今のユキ姉に言うべきことではない。そう思って俺は必死で言葉を探した。



「……す、きだから……だと思う」


 必死で探した結果がこれだった。


「そっか……好きだからなんだ」

「なんか……まともなアドバイスできなくてごめん」

「ううん、ありがとね」


 俺が部屋を出ると中から『よっしゃー! 頑張るぞー!』となんか声がしてきた。よくわからなかったけど役にはたった……? らしい。

 

誤字脱字、文法の誤りの指摘、感想など待ってますん

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