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超短編

作者:

ああ、神様。

ありがとうございます。

僕をいつかのときに戻してくださるのですか?

でも記憶は消されてしまうのですね。


僕は考える。

懸命になって考える。

いつに戻ろうか。


道に落ちていたあの鳥を拾う前に。

・・・だめだ。

僕はあの道をもう一度通ればもう一度拾うだろう。

だって、あの鳥を運んでゆけばあの美しい猫は助かるだろうとやっぱり気付くから。


白い服を買うか、お腹いっぱいのパンを買うか決める前に。

・・・だめだ。

僕はまた白い服を選ぶだろう。

だって、パンが無くても腐らないけど白い服がないと僕はきっと腐るとやっぱり考えるから。


君を失ってしまう前に。

・・・だめだ。

同じく僕は君を失うだろう。

だって、君の願いが叶うことを望むからやっぱり僕は君の邪魔はできないんだから。


僕が僕になる前に。

・・・だめだ。

やっぱり僕は僕になる。

だって、僕はいつだって一生懸命に考えてきたんだから。いつもそのときその道しかないと思ってきたのだから。


では、僕が生まれる前に。

・・・だめだ。

なにも変わらない、僕は生まれてしまう。

だって、母さんはやっぱり僕を生んでみるだろう、自分の命と引き替えて、父さんのために。父さんは女の子を欲しがるから。


だったら、お母さんのお母さんが生まれる前に。

・・だめだ。

やっぱりお母さんのお母さんは生まれてしまう。

だって、ひとりぼっちだったというお母さんのお母さんの母親は泣いた末に騙して生きる道を選ぶんだから。彼女に他の道なんてやっぱり見つからない。


ああ、神様、どこに戻ればいいのですか?

小さな細胞はきっと同じ進化の過程をなぞるでしょう。

そういう道を選んできた人はやっぱりそういう道を選ぶでしょう。

僕も、きっと今いる道を選ぶんです。

そして、嫌な今の僕が再び出来上がるんです。

戻るとこなんて見つからない。

だって、すべては再び繰り返されるのだから。


ああ、神様。

そうだ。

叶うなら、あなたが戻ってください。

無まで。そして決して生まれないでください。


神様・・・。

このちっぽけで嫌な僕は

神様が気まぐれにこの世界を創るもっと以前の

神様が誕生するときからすでに運命づけられた存在なのですね。


ああ、僕は、なんて壮大な生き物なのだろうか。





おつきあいいただき、

ありがとうございました。

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