決断
「そういうことか……」
足に包帯を巻いた、キィとかいう女がそう呟いた。
「何だよ、何か解ったのか?」
口元の血をタオルで拭いながら、訊いた。
「女帝の弟のことと、あの子が城に呼ばれた理由」
「あの子……湊のことか?」
「うん。単に巻き込まれただけかと思ったけど、あれは多分、運命だ」
口角をあげた。
「俺達がここにいるのも、運命か?」
そう訊くと、くすっと笑って言った。
「まさか。あんた達は、ただ巻き込まれただけだよ」
「……よくあるパターンだな。要するに、湊は主人公ってことか」
「面白いこと言うね。この場合は、そういう意味で間違いないかもね」
「お前、楽しそうだな。城の中で何が起きているか、解るのか?」
「いいや、城の内部の事は解らない。でも、湊は城の外で誰かと話しているよ。その会話から、推測はできる。楽しそうっていうのは、外れじゃないね。これでようやく、みんな解放されるんだ。帰りたいところへ帰るんだ」
「……」
帰りたいところ、か。
「うん? ……あんたは、そうは思っていないみたいだね。自分のいた場所には、もう居場所がないからかな?」
「……何が言いたい?」
俺の声に気付いたのか、レアがこっちを見た。
「女嫌いのヤブ医者なんて、誰も必要としないよね」
と、ここまで言ったところで、キィがレアを見て、肩を竦めて口をつぐんだ。
「まあ、お前の言いたいことは解る。俺だって、何も考えていないわけじゃない」
「懸命だね。あんたが物分かりのいい人間でよかったよ。とはいえ、辛い決断をさせたね……私が、女帝を止められればよかったんだけどね」
「それができるとは思っていないし、お前が行動を起こしていたら、悪化してただろ」
「それもそうだね」
笑って、目を閉じた。
「湊の声、聞こえなくなっちゃった―――」




