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「ちぇっ、スカイのやつ、あんな言い方しなくてもいいのに」

 レアさんが口を尖らせながら言った。

「レアさんは、スカイさんと、この国で知り合ったんですか?」

「いや、元々別の国で……幼馴染ってやつかな?」

「そうなんですか?」

「うん、家が近所同士なの。あいつはねぇ、元医者なんだ」

「え、医者!?」

 もの凄く意外だ。

「でね、かなり優秀だったんだけど……私の所為で、やめなきゃいけなくなっちゃった」

「何でですか?」

「私が彼にストーキングしたから」

「えっ?」

 驚く俺達を余所に、レアさんは続けた。

「親の病院を継いで、優秀な医者になったあいつの目を覚まさせたくてね……つきまといとか、美人局とか、色々やったら、女嫌いになっちゃった」

 飄々と語る。

「スカイがこの国にいるのは、女嫌いを治すためでもあるんだよ。出られないとは思わなかったけど」

「じゃあ、レアさんは……」

「ガーネットには、運悪く迷い込んだって言ったけど、本当は、スカイを追いかけてきたんだ」

「でもそれ、スカイさんは大丈夫なんですか?」

「何が?」

「だって、レアさん、その……」

 しどろもどろになってしまう。

「レアが、女嫌いであるスカイと一緒にいて、彼は辛くないの?」

 祭華が、俺の訊きたいことを直球で訊いてしまった。

「どうなんだろう、分からない」

「分からないって……」

「あいつがどう考えているかなんて分からないよ。……自分が何を考えているかすら、分かってないんだから」

「え、どういうことですか?」

 俺がそう訊くと、レアさんは立ち止った。

「……湊君、ロレンス、今から時間ある?」

「僕はあるけど、湊は?」

「俺は、燐を捜さないといけないから……」

「そっか。じゃあいいや、ホテルで話す」

 そう言って、また歩き出した。

「どうしたんだろう?」

 祭華が訊いてきた。

「さあ……聞いてみないと分からないだろ」

「そうなのかな」

「どうしたんだよ? お前まで」

「いや、レアとスカイって何か変わってるなって」

「変わってる……確かにな」

 女嫌いとか色々。

「いや、僕が言いたいのはそういうことじゃなくて」

「え? じゃあ何だよ」

「スカイは大の女嫌いなのに、レアと一緒に君のいるホテルに来た。そもそも、レアと一緒にいること自体、おかしくない?」

「そうか? レアさんなら平気とか、そういうことだろ?」

「じゃあ、君はどうして、スカイの家にいたの?」

「俺が倒れて、放っておけなかったとか……」

「女嫌いだよ? 普通、放っておかない?」

「え……でもほら、元医者だから……」

「ふーん……」

 まだ、何か引っかかるらしい。

「おーい、早く行こうよ」

 遠くからレアさんが呼んでいる。

「今はとにかく行こうぜ」

「……うん」

 渋々、歩き出した。


 ホテルに戻ると、既に燐も戻っていた。

「燐!」

「湊君!」

 俺を見つけて、駆け寄ってきた。

「今度は燐が勝手に居なくなっちゃったのかよ?」

「ご、ごめんなさい……実は、変な集団に、メアリーちゃんを寄越せって言われて、追い掛けられて……」

「メアリーを? 大丈夫だったのか?」

「うん。でも、まだ近くにいるんじゃないかって思って、外に出られなくて」

「そうだったのか……でも、それなら、ピアスで連絡くれればよかったのに」

「え、連絡したよ? 湊君、全然連絡無かったから、またピアスの電源切っちゃったのかなって思ってたんだけど……」

「え? いや、切ってないし、そもそも俺、切り方知らないし……」

 燐が切ってたんじゃないのか?

「もしかして、ジャミングされてる?」

 レアさんがそう言った。

「ジャミングって……電波妨害、ですか?」

「うん。試しに、今、交信できるかやってみて」

「えーっと、……」

「あっ、聞こえたよ」

 軽く念じただけで、燐が返事をした。

「ってことは、屋内では大丈夫みたいだね」

「でも、だとしたらどうして……」

「さっきの、メアリーちゃんを寄越せって言った集団……何か、関係しているかもね」

 そして、祭華を見た。

「ロレンス、君も、注意しておいた方がいいよ」

「え、何で?」

「だって、メアリーちゃんが狙われたってことは、君らのような、物として呼ばれた人達が狙われている可能性もあるってことだよね?」

「あー、そっか」

 なるほど、と、掌を叩いた。……って―――。

「いや、そっかじゃないだろ! どうするんだよ!?」

 申し訳ないが、メアリーの時より焦ってしまう。

「うーん、大丈夫だと思うよ? 僕、運良いし」

「でも……!」

「そこまで言うなら、このホテルに泊まらせたら? そばにいた方が、安心できるみたいだし」

 焦る俺に言ったレアさんの言葉に、祭華の顔がぱーっと明るくなった。

「いいねそれ、持ち合わせもあるし」

「ロレンスも乗り気だし、どう? 湊君」

「いや、それはそれで弊害が……」

 でも、そうとも言っていられないのか。

 ちらっと、横目で燐を見る。

「あ、私は、大丈夫だよ」

 そう言って、にっこりと微笑んだ。

「じゃあ、決まりだね。これからよろしく、湊」

 笑顔で俺の肩を叩いた。もう、決まったらしい……俺の貞操が危うい。

「うう、む……そ、そうだ、レアさん、話があるんですよね?」

 こういう時は話題を変えよう。

「おっと、そうだったね」

「え、話って何ですか?」

 燐が訊いた。

「湊君とロレンスに、大事な話があったんだよ。―――じゃあ君達の部屋で放そうか。あ、燐ちゃんは、席を外してくれるかな? ピアス通して、話はわかるはずだし」

「えっ、それは、どうして……?」

「直接聞かせるのは、何か嫌なんだ。それに、男同士の話だからね」

 綺麗なウインクをした。……男同士の話?

「レアさん、男同士の、っていうのは?」

「それも後で話すから! ほらほら!」

 背中を押されつつ、部屋へと向かった。


 部屋に入り、俺達をソファーに座らせると、レアさんは言った。

「今から話すのは、ここから遠い国で、過去に起こった話だよ―――」

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