欲
注意書きに添えてるか解りません。付け忘れてしまいましたし……。
ガーネットさんが外に出ている間、燐が風呂に入ると言い出した。
「昨日、色々あったから、お風呂に入れてないんだよね」
そういって、メアリーを連れて、部屋にある小さな風呂場に向かっていった。
部屋に、祭華と2人になった。俺はソファに座り、祭華はその近くに立っている。
「……」
特に、話すことが無い。
「……祭華、お前、もう帰りなよ」
「嫌」
即答だった。
「嫌って……あっ」
思い出した。
祭華の、メインじゃない目的。
それに今、この部屋には2人しかいない。
「昨日の事で、もう懲りたと思ったのに……何がしたいんだ?」
「欲だよ」
「え?」
そう言うと、俺の隣に、俺にくっつく様に腰かけた。
「この世界にきて、僕はずっと欲を封じられてたんだ。大体、半年ぐらい……半年だよ? 君だったら耐えられる?」
半年……耐えられるとは思うが、祭華なら無理だったんだろう。
「でも、女しかいないんだから、お前にとってはいい環境なんじゃ……」
俺の言葉に、祭華はため息をついた。
「解ってないな……女しかいない、僕も女になってる。でも、僕という"男"はいない……それが嫌なんだ」
俺の手を握った。
「で、でも、なんで俺なんだ?」
こんな事を言うのも何だけど、レアさんやスカイさんもいるのに。
「君だから、じゃ、理由にならない?」
「ならない。俺じゃなきゃダメな理由も、俺でスイッチが入った理由も解らない」
「久しぶりに、僕を理解している人に会えたんだ……そこが、君と周囲の人間の違いだよ」
「うーん……」
「……納得いかない?」
頷く。
「えっと……何て言ったらいいかな……」
色々考えていたが、徐々にイライラしてきたらしく―――。
「湊」
「ん?」
「理由なんてないんだ」
「……え?」
困惑する俺の肩を掴んで、続けた。
「お願い、お金払うから」
「い、いや、ちょっと待て、この小説R15付け忘れてたからちょっと待て」
手を離した。
「湊、お願い、もう我慢出来ない……」
息が上がってきている。
「わ、解った、解ったから……じゃあ、キスくらいなら」
「……いいの? 本当に?」
「う、うん」
「ありがと……」
俺の顎を持ち上げ、顔を近付けてくる。
ふっと、互いの唇が触れた。
「……」
目を真っ赤にして、泣きそうな顔で離れた。
「何でそんな顔するんだ……」
「……解んない」
身体に腕をまわして、抱き着いてきた。
「祭華、お前……変わったな」
「元々変わってるよ」
「それは解るけどさ……」
自他共に認める変人度が増したっていうか……。
「今はそんなの、どうだっていいじゃん」
腕の力を強めた。
「さ、祭華、胸が……」
当たってる当たってる。
「湊、僕より大きくて良いなあ」
いや、そういう事じゃなくて……。
「も、もういいだろ」
無理矢理離した。
「……ありがとう」
「うん……」
「じゃ、僕、もう行くね」
そう言って、部屋から出て行った。
「はぁ……」
ため息が出た。……どっと疲れた気がする。
その時だった。
「みなと」
「いっ!?」
風呂場の方から声が聞こえ、変な声が出た。
見ると、こちらをじっと見つめるメアリーがいた。
「め、メアリー……燐は、どうしたんだ?」
「りん、まだおふろにはいってる」
「そ、そうか……」
見られていない、のだろうか……。
「みなとのばか。りんがみなとのことすきって、いってくれてたのに」
見られてた……。
「い、いや、これには、深い理由が……っていうか、教育に悪いものを見せちゃったな……ははは……」
笑うしかない。何とか言い訳を考えないと。
「わたし、こどものからだだけど、こどもじゃない。りんとおなじとし」
「え、そうなのか? ……ああ、でも、そうなのか」
俺と一緒に遊んでたあの地点で、既にメアリーはいたから……そうか、見た目ですっかり勘違いしてしまっていた。
「みなと、いじわる」
近付いてきた。
「メアリー、弁解させてくれ」
膝をポンポンと叩くと、ソファをよじ登って、膝に座った。
「言ったと思うけど、祭華と俺は、中学の同級生で、親友なんだ。あいつは、自他共に認める変人で……まあ、どういったところが変人なのかはちょっと置いておいて……内気で派手な事が苦手な男なんだけど、髪フェチで女が好きで、ゲームのキャラクターもステータスじゃなくて見た目で選ぶようなやつで……なんて言ったらいいのか解らないけど、悪い奴ではないんだ。実は、祭華のわがままを聞いてやった事は、これまにでも何回かあるんだ。さっきの様なのは、さすがに初めてだけど……言い出したら聞かないから、仕方なく答えてるんだ」
何かを言ってどうにかなる相手じゃない事は、祭華と同じ中学の、同じクラスの奴ならみんな知っている事だ。
「じゃあさいか、ひどいひとじゃない?」
「酷い人じゃないよ」
「みなと、いじわるじゃない?」
「……意地悪じゃないよ」
そこは俺が言ったって仕方ないと思うけど……。
「メアリーちゃん、お待たせ」
燐が風呂から上がって戻ってきた。
「あれ? 祭華さんは?」
「さっき帰ったよ」
「そっか……メアリーちゃんと何の話してたか聞こうと思ったのに」
「あ」
忘れてた……。
「まあ、大したことならすぐ教えてくれただろうし、大丈夫だと思う」
「だと良いんだけどね」
その後、部屋でくつろいでいると、ガーネットさんがレアさんとスカイさんを連れて戻ってきた。
「女帝の城に行って、魔力の秘密を暴いてきたんだって? どうして昨日のうちに話さなかったんだ」
スカイさんがそう言って俺を睨んだ。話が少し改変されている……。
「す、すいません……ショックだったんで、言う前に頭の中で整理したくて……」
「ふん……それはいいとして、向こうで何を見たのか、俺達にちゃんと話してくれ」
「は、はい」
女帝に遭って、城に行き、弟に会った事を、一から全て話した。
「なるほど……弟から魔力を奪っていたのか……」
「はい。それで、あの、提案なんですけど、城に乗り込むんですよね?」
「当たり前だ。この手で女帝を殺さなきゃ気が済まないし、魔法も解けないだろ」
「じゃ、じゃあ、俺も行かせてください。道とか解るんで」
「そうだな……先導してもらおうか。その方が楽だ」
「ありがとうございます」
これで、何とか、女帝と話せる可能性は出てきたか……。