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 あの後、ひとまず話をしようということで、燐とメアリーと一緒に、祭華の家のリビングへと通された。

 ソファに座ろうとしたら、燐から強烈な平手打ちをかまされてしまった。

「本当に……何を考えているの!? 私達の気も知らないで!!」

「……ごめん」

 涙目で責められて、謝るしかなかった。

「燐ちゃん、ちょっと」

 祭華が燐の肩を掴んだ。

「湊を呼び出したのは僕なんだ。そりゃあ、彼も曲解していたみたいだから、悪くないとは言わないけど、でも彼だけを責めるのは間違ってるよ。それに、彼が勝手にホテルを出て行ったのは、これで2回目。1回目の後、また出ていく可能性があったのに、放置したのは燐ちゃんでしょ? 叩く程責めるくらいなら、どうしてしっかり手綱を握っておかなかったの?」

「そ、それは……」

 俯いて、黙り込んでしまった。


 手綱とか何とか、色々気になる事はあったが、要するに……。

「祭華、お前は、俺が言うことも聞けずに勝手に出ていく子供みたいな人間だって思ってるって事か?」

「違うの? 現に出て行ってたでしょ、メアリーちゃんが止めるのも聞かずに」

「あれは……お前が回りくどい呼び方をしたのが原因だろ」

「そりゃそうだけどさ……」

 その時、不意にメアリーに手を掴まれた。

「けんかしないで。みんなわるかった。りんも、みなとも、さいかも」

「……そう、だな」

 子供にそう言わせてしまうのは、駄目だよな……。


「……で、祭華、お前は何の用があって俺を呼んだんだ?」

 ソファに座ってそう切り出した。

「君が昼間、どこに行っていたのかが気になってね」

 昼間……女帝に会っていた、あの時間。

「燐ちゃん、君は、湊があの時間どこに行ってたか知ってる?」

「い、いえ、確か、ホテル以外のところも歩き回ってみたい、って言ってました」

「そんな事言ったんだ……」

 チラッと、横目で俺を見た。

「あの、祭華さんは、湊君が嘘をついてると思ってるんですか?」

「そういうことになるね。

 湊は、決して無駄な事はしない男なんだ。"ホテル以外のところも歩き回ってみたい"なんて理由で、勝手にホテルを出るようなことはしない。つまり、あの時間、湊は、僕達に言えないような事をしていた……ということになる」

 流石、俺の親友なだけあって、解っている……。

「というわけで、湊、何があったか、説明してくれるよね?」

「……」

 その言葉に、首を縦には振れなかった。

「……まあ、言いにくい事なのは解るけどさ、君は、この世界の事は何も知らなくて、僕や燐ちゃんの方が、ずっとずっと詳しいんだよ。黙ってることにメリットがあるとは思えないけど」

「うん……」

 黙るよりは、話した方が良いってことか……。

「解った、全部話す」

 黙っているのにも限界があった。

「メアリーを連れて、ホテルの中庭に出た後に……女帝に会ったんだ」

「えっ!?」

 燐が声を上げた。

「その後、居城っていうか、家に招かれて―――」


 全て話した。城の内部や、弟の事等、全部。


「そんな事が……」

 言葉が出ない、といった感じだった。

 黙る2人を見て、更に話を進めた。

「……俺は、女帝は、助けを求めるために、俺を城に呼んだんじゃないかと思ってる」

「どうして、そうなるの?」

 祭華が訊いてきた。

「だって、おかしいだろ? 敵かもしれない人間を、自分の家に招くなんて……」

「だとしても、何で君なの? とても頼れる存在には思えないけど」

「お前……随分だな……」

「事実でしょ」

 ぷいっと、そっぽを向いた。つか、何でこんなに不機嫌なんだ?

 ……で。

「俺としては、女帝を助けたいと思うんだ。もしかしたらそれで、元の世界に帰してくれるかもしれないし」

「助けるって……どうやって?」

 今度は燐が訊いてきた。

「それはまだ解らないけど……手を差し伸べる姿勢を見せれば、何か変わるかもしれないし」

「何か……」

 まだ動揺してる……仕方ないか。

「ところで、湊」

 また祭華が口を開いた。

「何だ?」


「話変わるんだけどさ、お風呂どうするの?」

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