質問
湊君がいなくなって、もう3時間くらい経過していた。
ガーネットさんは湊君を捜しに行き、部屋にはロレンスさんとメアリーちゃんと私だけが残った。私は、何をするでもなく、ずっとソファに座っていた。
「りん、なかないで。みなとはぜったいかえってくる」
メアリーちゃんが、そう言って私の肩を撫でた。
別に、泣いていたわけではない。でも、泣きそうな顔は、していたかもしれない。
……こんな小さい子供の前で、情けない。
「うん、そうだね。ありがとう、メアリーちゃん」
そっと頭を撫でると、先程の様に、私を見て優しく微笑んでくれた。
「あの、ちょっといいですか?」
と、その時、聞きなれない声が聞こえた。
顔を上げると、声の主はロレンスさんだった。そういえば、今の今まで声を聞いていなかった。
「な、何でしょう」
「さっきから話に出ていた、湊……という人物は、あなたの友人ですか?」
「え? あ、はい、そうです」
友人……間違いない、よね?
「そうですか」
そのまま黙ってしまった。
「……あの、湊君がどうかしたんですか?」
「いえ、何でもありません。ちょっと気になる事があったもので」
「は、はぁ……」
「せっかくなのでもう1つお聞きしたいのですが、彼の名字は、何ですか?」
「え?」
私は、その質問に違和感を覚えた。
「橋本、ですけど……」
「……そうですか」
間を開けて答えたロレンスさんの顔にも、少し違和感を覚えた。
「あの、ロレンスさん、今どうして―――」
その時だった。
「おい! 湊が帰って来たぞ!」
ガーネットさんが慌ただしく部屋に入ってきた。
「本当ですか!?」
「ああ。とにかく来てくれ、フロントにいるから!」
部屋を出て行ったガーネットさんを見て、咄嗟にメアリーちゃんを抱き上げ、フロントへ走った。




