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まだプロローグの域だと思ってもらっていいです。

 ここは、金糸雀王国。国を上空から見た形が金糸雀そっくりということから、そう名付けられた、なんとも安易な名前の国だ。

 その国は、他とは違う所がひとつだけある。


 男が、存在しない事。


 国の王や、家臣や大臣すらも女性で、各家々からも、女しか生まれない。別名、"女帝国"と呼ばれている。

 そして、国民の多くが、この国以外からやってきたということも、他の国とは違う部分だ。

 金糸雀王国の王が生粋の男嫌いなのが、その理由だ。


 そもそも、なぜ女しかいないのに栄え続けているのか?

 その理由が、王が国中に張り巡らせた"結界"にある。

 結界とは言っても、国中の地面に施された"術"の様なものらしいのだが……。

 踏んだ者の身体を女体化させる効果があり、しかも、一度国内に足を踏み入れたら最後、二度と国からは出られないような仕組みになっている。

 ……要するに、他の国から何も知らずに入り込んだ男共が、そのまま女体化して、国から出る事も叶わず、そのままこの国で一生を終える―――そうやって、この金糸雀王国は栄えてきたのだ。


 ちなみに、出産云々等はどうするのか、だが……。

 国の至る所に、"精子屋"なるものが点在し、格安で精子を販売しているのだそうだ。

 そこで購入した精子を、同じく国の至る所に点在している、"受精場"という場所にて、無料で自身の卵子と精子を受精してもらうのだが、この際用いられる方法が、"人工授精"である。

 この国の人工授精は完璧で、成功率120%と言われているらしい。


「―――という訳なんだけど……納得してくれた…?」

「……」

「え、えーと…」

「……」

 この国がどういう国なのかについて、目の前にいるエセインチキ妖精が勝手に長ったらしく説明していたのを、俺はジト目で睨みつつ、頭の中で逐一、悪態を突きつつ聞いていた。

「なんか今、語りの方でボロクソに言われた気がするんだけど、私の気のせいかな……」

「知らねぇよ」

 そっぽを向きつつ即答。

「あ、女の子がそんな言葉使いしちゃいけないよ?」

「うるせぇ!! 人を勝手に女にしておいて何だよ!!! お前が女じゃなかったらぶん殴ってたんだからな!!」

「わっ。お、怒らないでよ……何度も言うけど、湊君が女体化したのは私の所為じゃなくて、この国の王が仕掛けた術の仕業なんだってば」

「王なぁ……よし、それなら今すぐ王様に掛け合って術を解いてもらうか!」

 そうと決まれば即行動だ!!

「そ、その事なんだけど、湊君……」

「あ?何だよエセインチキ妖精」

「エセインチキ妖精って……私にはちゃんと秋桜燐って名前があるんだから、名前で呼んでよ。それに、エセもインチキも"本物ではない"って意味だから、矛盾してるじゃない」

「うるせぇ。つか異世界人のお前にそんなこと言われたくねぇよ」

「異世界人……確かに、今の私はそうかもしれないけど、こう見えても私、元は人間だったんだからね?」

 え?

「どういう意味だよ? それ……」

「うーん……ザックリ説明すると、私も、湊君のいた世界と同じ世界から来たんだ」

 燐は、まるで咲くような笑顔でそう言った。

 その笑顔からは、若干の悲しさが、感じ取れた。

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