感覚
急ぎます。燐目線です。
翌日。日の出と共に目が覚めた。……実質、4時間しか寝てない。
音を立てずにベッドを出て、ソファを覗くと、湊君が体を丸くして眠っていた。
結局、ソファで寝てもらっちゃった……私がズルしたの、解ってたのに。なんだかんだで結構優しいんだよね……初めて会ったあの日、一緒に遊んだ時も、口は悪かったけど、優しく接してくれたし……。
「……ありがと、湊君」
小声で言った。起こさないように。
部屋についてる洗面所で顔を洗ってから、私はホテル内を散歩しようと考えた。部屋にいても、すること無いし。
廊下に出ると、窓から朝日の光が差し込んでて、うっすらと明るかった。
とりあえず、廊下の窓を開けてみる。多少軋んでて開けにくかったが、なんとか開いた。
開けた瞬間、廊下にふわっと風が入り込んだ。草花の良い香りと、鳥のさえずり―――今日は五感が冴える。妖精は人より感覚が敏感なのだ。
目を瞑って息を深く吸い込むだけで、自分は今、草原のど真ん中にいるんじゃないか、と錯覚する。
……一刻も早く、この感覚を忘れたい。
「っ……」
目を開き、半ば乱暴に窓を閉めた。毎度のことながら、"今の自分の体質"に苛立ちを覚える。
私は、妖精だ。妖精とは言っても、種類がある。
私の場合は、"自然の妖精"。けれど、下級だから、何か特別な技が使える訳じゃない。でも、毎日こうして朝日の光を浴びて、植物の香りと風を感じないと、ストレスで身体を壊してしまう。非常に不便な身体なのだ。
フロントに行こうと歩き始めたところで、自分の後ろにいる何者かの気配に気付いた。
「……!」
咄嗟に後ろを振り替えると、そこにいたのは―――7歳くらいの、小さな子供だった。




