トリップ
―――どういう、事だろうか……。
いきなりこんな事を訊くのもあれだが―――
ここ、どこだ?
見渡す限りの、緑。
そもそも、何でこんなところにいるんだ?
普通に学校から家に帰って、普通に自分の部屋のベッドに鞄を放り投げて、普通に手を洗おうと洗面台の前に立った瞬間―――
ピシッ
――と、鏡が割れて、それと同時に、鏡の割れ目から眩しい光が漏れ、気が付けば、ここにいた。服装はそのまま。
相変わらず、見渡す限りの緑――いや、道はある。
舗装されていない、畦道。原っぱにぽつんとあるその道の真ん中に、俺は立っていた。
「ここ、どこだ?」
状況把握のために声を出した瞬間、初めて自分の身に起きた違和感に気付いた。
声が、高い。
それだけではない。
「な、なんだ? これ……」
自分の背中にかかるくらいにまで伸びた、長い黒髪。
極めつけは、それに触れようと、腕を動かした時に気付いた、胸の2つの膨らみ。
ま、まさか―――と、ゆっくりと手を下に降ろし、足の付け根付近を弄る。
「………無い」
おかしいぞ。俺が生を受けて17年、一度たりとも裏切った事のなかった俺の相棒は何処。
どうやら俺、女になったみたいだ。