恋律方程式
恋律方程式
「いくら言っても無駄なのかい?」
弱冠20歳の氏孝は、目の前の女性に問いかける。
「当たり前。私に求婚するなら、言葉ではなく武で語りください!」
そう答えたのは、氏孝の3つ上の男勝りな女性。名は麗氏。
容姿端麗・文武両道・才色兼備の三拍子を兼ね備えた彼女は、今までと同じように、武器を構える。
その姿を見た氏孝は、やれやれと首を振り、腰から一振りの両刃剣を取り出す。
氏孝は、噂に聞いてたと通りの反応に対処すべく、策を練りながら両刃剣を構え、
「はぁ、おなごに刃を向けるのは嫌いなんだが、方法がないなら全力で落としにかかるよ」
ため息をつく氏孝に、
「倒されて、醜い姿をさらさぬ様にご注意くださいな!」
言い放った一言を合図に、麗氏は馴れた手つきで腰の双剣を抜き飛び上がる。
「おわ!!」
氏孝は、振り下ろされた一本を身体をひねって回避し、そこを鋭く突いてきたもう片方を、自らの剣で弾き距離をとる。
「今のをかわしましたか。しかし、私も暇ではないので、早々に決着とさしていただきます!」
麗氏は、さらに素早く直進し、氏孝に連続で双剣を叩き込んでいく。
「くっ、流石に、つよい、ねぇ」
必死に麗氏の刀を捌きながら、氏孝はジリジリと後ろに下がる。
「そなたも、私の剣を受け続けるしか出来ないのですよ。なので・・・・・・これで終わりです!!」
麗氏は、そういうと不意に一歩後ろに下がり、双剣を地面と水平に構えた。
氏孝は、突然無くなった力のせいで、身体のバランスが前方へと崩れる。
そこに、麗氏は構えた勢いをそのまま前へ突き出す。ちょうど氏孝の首辺りに、鋭く光る二本の剣が襲いかかる。
しかし氏孝は、その前方へ出た重心に逆らわず、一気にしゃがみこんで麗氏の双剣をやりすごした後、自分の両刃剣を麗氏の首元にに突きつける。
「チェックメイトだ、麗氏さん。俺の心はこれで証明できたかい?」
固まる麗氏に、氏孝は軽くつぶやく。
「ははは、そなたには完敗だ。ようやく現れてくれたのだな」
「ん? どういう意味だい?」
氏孝は、麗氏の首から剣を離し、腰の鞘にしまう。
麗氏もドカッと、そのまま地面に座り込み、剣を置く。
「ずっと探していたのだよ。私より強く賢い男をな・・・。さっきの戦いで、そなたは私の挑発にも攻撃にもすべて耐え切り、己の意思を示してくれた」
麗氏の言葉に、氏孝は肩をすくめて、
「ふっ、これが僕の恋の方程式って訳だよ」