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【完結】史上最強プラス ~鬼神のロジック~  作者: 前田留依


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第1章 落下スル少年と殺意アル刃物8

※※※※※※※※※


 英利に連れて行かれたのは学園の書庫だった。

 彼は当たり前のように英利は書庫のカードキーを出して、ドアを解錠している。

 図書委員でも生徒会にも入っていないのに、何処で手に入れたのか全く謎だ。

 書庫にはいると、英利はドアを閉める。


「あのさ……事故って、オレが入院した事故だよな?」


 成吾が尋ねると、英利はフフッと笑った。

 そういえば、あの時……彼は無免許運転をしていた。あれが夢でないとしたら、黙っていろとか言われるのだろうか?


「うん、その件でさ。どうやって遊ぼうか色々考えたんだが」

「は?」

「鬼の斧を飲み込んでしまった代償として、取りあえず戦車でぶっとばすとか、毒を飲ませて牢屋に放り込んでみるとか、他に刺激がある方法がないかなと考えていた。まあ、そういうことで――」


 英利は微笑んで、手を差し出してきた。


「心の友と書いて、ベストフレンドになれ」

「絶対ヤだ!」


 背を向け走って逃げようとして英利に脚を引っかけられる。

 成吾は倒れてガンッとドアに衝突した。


「いてぇっ」

「よく倒れるって聞いていたけど本当だったのか」


 自分でやったことを棚に上げ、英利は感慨深(かんがいぶか)げに呟く。


「お前、足引っかけたろ!」

「俺が? そんな……君とは友達なのに?」


 英利は悲しそうに言いつつ、成吾の背を踏んづける。


「踏むな!」

「踏んでないと、また逃げる癖に」

「友達って、踏まないと思う!」

「あ、よかった。友達だと認めてくれるのか」

「認められるか!」

「えー、じゃあさ。俺の家畜にでもなる?」


 真顔で言うので、成吾は頭が混乱していく。唄子が彼を嫌がるのが、すごくよくわかってきた。


「――お、おまえな。いきなり友達だとか、変人だからって、えっと、だからな」

「言葉は整理した方が良いよ。相手に伝わらないセリフは、単なる雑音だ。これ、友達としての助言。それと死にたくないなら俺の言うことは聞いた方が良いよ。死にたいなら、いいけどさ」


 いかれてるっ!

 成吾は逃げようと床を這おうとした。


「ムダ」


 英利が成吾の肩に足を乗せ、そのままガシガシ身体を揺さぶる。


「ええぃっ。踏むなっ」


 怒鳴って英利の足を払い、なんとか成吾は立ち上がった。

 顔が女っぽかろうと、背が161センチだろうと、心は立派でもないが男である。

 英利が空手だか柔道だかの黒帯で、キックボクシングもやっていたとしても、言うことを聞くつもりはない。

 殴りたいなら殴ればいい。


「人様の背中を踏んづける教育、どこで受けた。このド腐れ!」


 英利の胸ぐらを掴んで怒鳴ると、彼は小さな子を見るような目つきで笑った。


「つま先立ちで怒鳴られても、説得力ないって」

「うっ」

「ハムスターさんでちゅか? 小さくてかわいいでちゅねー」


 拳より言葉の方が痛い。

 成吾は胸ぐらを離して床に(かかと)をつけた。

 もう英利の顔を見上げるしかない。彼の身長は約170センチ以上ありそうだ。


「そういえば、池平くんは唄子くんと付き合わないのか? もしかしてチビ同士で結婚した場合、子供がガチチビになる確率が高いから躊躇(ちゅうちょ)してるとか? しかし産まれるのが娘だったら美少女率は高そうでいいんじゃないか? 息子だったら女顔のチビ率95パーセントになるが」


 女顔のところで英利は成吾の顔を指さした。

 成吾の心の穴から怒りが打ち上げられる。

 左手で英利の手を叩き落とし、右手の拳を突き上げる。

 アッパーを決めようとしたが、英利は軽く体を曲げて拳を避けた。


「嬉しいな。君が攻撃に出た時点で、俺の言葉の正しさが証明されたわけだ。欠点つかれて暴力をふるうのって、女のヒステリーみたいだと思わないか?」

「人が嫌がる言葉っ、よくそんなに思いつくよなっ!」

「それが俺の美点だから」

「……」

「日々の鍛錬(たんれん)で、この美点は咲き誇る花になったんだ」


 人生で最も関わりたくない人種に接近されてしまった。

 その上、逃げられそうにない。

 絶望する成吾の後ろで、ピッと電子音がして書庫のドアが開く。


「来るのが遅いよ」


 英利がご満悦の顔で声をかける。

 成吾が目をやると、規則どおりに制服を着た女子がいた。

 紀田綾女である。

 膝丈の襞スカート、ウエストを隠す丈のセーラーシャツ。

 柔らかそうに膨らんだ胸の上に、アゲハ蝶のようにリボンが寝そべっている。


「――申し訳ございませんでした」


 綾女は深々と頭を下げる。


「ええぇぇと、事故のこと?」

「それもありますが……」


 綾女は直ぐ側まで近づくと、成吾の肩を優しく払いはじめる。

 英利の靴痕(くつあと)が、くっきりと残っていた。


「どちらが声をかけるか、じゃんけんして負けてしまったのです。英利はずるいんですの。微妙な遅出しをして勝とうとしますのよ」


 細い手で丁寧(ていねい)に靴痕を消してから、綾女は顔を上げた。

 身長差がないから、もろに視線と視線が重なり合う。

 髪は黒いが瞳は琥珀(こはく)だ。

 長い睫毛が目を隠しても、瞳は浮かんで見えるほど明るい色をしている。


「成吾さんに、お話があります」


 唄子と一緒に帰宅することが多いので、綾女とは何度か話をする機会があった。


「事故のことなら、言っても誰も信じないから言わないよ」


 成吾は先手を打った。こんな綺麗な子に「英利の言うことを聞いてください」なんて言われたら(うなず)いてしまうかもしれない。

 回りくどくなって話がこんがらがる前に、さっさと終わらせたかった。


「事故の原因は、わたくし側にありますの。自転車も弁償(べんしょう)しますし、入院費の方もお支払いいたします。その事については、事実を少々ねじ曲げることになりますが、直接ご両親にお話しいたしますから」

「でも、はじめに転んだのはオレだし」


 あまりにも誠実に対応されて成吾は困ってしまった。


「あんな事故を起こした後で、本当に勝手な言い分ですが――」

 綾女はそう言って、成吾を直視(ちょくし)する。


「お友達になってもらえませんか?」

「そ、その」

「できれば、仲間と書いて友達になってもらえませんか?」

「……」


 言葉づかいが丁寧なだけで中身は英利と同じだ。

 しかも静かな迫力すら感じる声色(こわいろ)だった。


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