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【完結】史上最強プラス ~鬼神のロジック~  作者: 前田留依


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第3章 立チ上ガル少女と戦サノ女神5

「――周囲の火は、ほぼ消火できたようですわね」


 それでも雨は降らせておこう、と綾女は算段(さんだん)する。

 火が心界(しんかい)の力なら、護孔(ごこう)の水を浴び続けた方が防御が上がる。


「向こうに消えない一角があるな」

「カノエを放ってシンを追わせましょう。その先に、お姉さまと筒獣(つつじゅう)がいるはずです」


 英利が頷いて、カノエの尻を軽く叩いた。

 カノエは吠えながら走り出す。

 居場所を告げながら行くのだ。

 飼い主が置いてけぼりになったとしても、他の狼に情報が伝わる。


「行くぞ」


 英利が小柄な唄子を抱きなおす。

 唄子は我が儘(わがまま)お姫様のような顔になって、自分専用コレの首に両腕をきっちりと回す。


「いーい。約束守りなさいよ。怪我したら一生恨むからねっ」

「はいはいはいはい。もし間違って(ただ)れたら責任取るし、それでいいだろ」

「……間違って爛れたら、あんたを刺すわ」

「あー、やだこの女」


 面倒くさそうに言いながら英利が走り出す。


「なんかなぁ、戦おうって気力が落ちていくっていうかなぁ……」


 二人の後を追いながら成吾がボソボソと呟いた。


「妬けますか?」


 耳を傾けるようにして成吾が綾女の方を見る。


「二人を見てると、妬けますか?」


 聞かなくても良い言葉が綾女の口をついて出てきてしまう。

 筒獣(つつじゅう)と戦わなければならないときに、なにをしているのだろうか?

 懸命(けんめい)に走って成吾を追い抜きながら、綾女は後悔していく。


(おろ)かななことを聞いてしまいましたわ……)


「あれはあれで面白いと思うよ」


 成吾の声が真横から聞こえた。

 鬼の斧の力だろうか、平然とした顔で綾女と並んで走っている。


「でも、今、面白いもの見たってさ……。なんていうか……ギャグ漫画って火の中で読んでも面白くないよね?」


 心境そのものの複雑な表情で言ってきた。


「ま、それよりもっ」


 成吾が綾女をさっと抱き上げた。

 唄子と同じお姫様だっこだ。


「え……、どうして?」


 驚いて、成吾の手を探して目を動かす。

 右腕の鬼の斧の刃は丸まって、綾女を傷つけないようになっていた。


「鬼の斧が、体力を取っておけって。オレはよくわかんないけど、今、すっげー身が軽いんだよね。綾女さん一人ぐらい平気なんだ」


(嬉しい……っ)


 筒獣と戦わなければならないときに、なにを考えているのだろうか?

 綾女は、自分がコントロールできなくて戸惑っていた。

 両頬に赤い色が散るのがわかる。


(どうしよう……顔が熱い)


「ごめんね。着いたら降ろすから」


 頷いてから、唄子の真似をして成吾の首に両腕を回す。唄子のように抱きついてみる。

 成吾に抱き上げられながら、綾女は少しだけ明るい未来を夢見てみる。

 夢を持っても仕方がない、と思っていた自分を恥じながら。


(わたくしだけのボンボンショコラ)


 この瞬間だけでも……負けないために、明日は明るいという夢をみる。

 戦いが終わったら、学校に通うのがきっと楽しくなる。

 学校に行けば成吾がいて、綾女の側にいてくれる。

 唄子や英利をまきこんで、どこかへ行くのも楽しそうだ。

 おしゃれをして成吾達と遊びに出かける。


(あ、でも……)


 綾女は与えられる服しか持っていなかった。

 自分から買いに行こうともしなかった。選び取ることをしてこなかった。


「……買い物さえ」

「なに?」


 成吾が問い返してくる。

 綾女は「なんでもない」と首を振った。


『――屡衣は英利と子を成せ、綾女は咲人と子を成せ』


 長老方の言葉が耳の中で大きく広がっていく。


 感情を無にして子を作れ。

 無理だ。

 人間は筒卵を生み出す存在なのだ。

 強い、強すぎる、欲があるのだ。


(わたくしは、わたくしの相手を自分で選びますわ。長老方が否というなら、わたくしは承諾を得るまで説得し続けますわ。何時間でも、何日でも、何年でも)


 負けない。長老方にも、姉にも、筒獣にも、負けない。

 雨が、蒸気が、服と肌を密着させて一つにする。

 相手の肉体をリアルに感じる。

 自分を抱きしめる成吾の腕が、胸に触れる体温が愛しい。


(負けない。わたくしは、欲しい人をみつけてしまったから……)


 綾女は成吾の肩に顔を寄せた。

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